投稿者: 半田卓郎
俳句総合誌掲載
〇「俳句界」2022年9月号(文學の森)
作品6句 「星空へ」 勝浦敏幸(爽樹幹事長)
お喋りのやがて黙り墓洗ふ
都電きしめき新涼の星ひとつ
秋入日目深にかぶる野球帽
秋燕のひらり返れば四分休符
いななきの嘶きをよぶ宵の月
星空へつづくこの道芒原
〇「俳句界」2022年9月号(文學の森)
雑詠 能村研三(「沖」主宰)選
特選 関口幹雄(爽樹会員)
夏立つや挑戦といふ真帆上ぐる
(選評)六十年前、一人で太平洋をヨットで横断した堀江謙一さんが八十三歳になって、今度は世界最高齢で単独無寄港の太平洋横断に挑戦し無事成功した。この挑戦は多くの人に勇気と感動を与えた。掲句の「挑戦といふ真帆」を上げたのはまさしく堀江さんの航海のことを詠んだものだろう。
〇「俳句界」2022年10月号(文學の森)
雑詠 大串 章(「百鳥」主宰)選
特選 鈴木正浩(爽樹会員)
滝となる前の流れの音もなく
(選評)滝になる前の静かな流れを画いて臨場感があり惹かれる。静かに流れる川が崖や急斜面に来ると、いきなり音を立てて飛沫を飛ばして滝となる。川から滝に変化する水の流れは魅力的で滝マニアも多い。『滝王国ニッポン』『この滝がすごい!』など滝に関わる本も多数出版されている。
第4回爽樹吟行俳句大会(小江戸川越)
川越市は大正十一年に誕生した県内初の市で、当時の人口は三万人。現在は人口三十五万人を超える中核都市となっている。
今年は、十二月に県内で初めて市制百周年を迎える。
この記念すべき年の6月29日にウェスタ川越において、第四回爽樹吟行俳句大会が、72名の参加を得て盛大に開催された。
挨拶する河瀬代表
4人の選者選及び参加者互選(選者選加算)の結果は次のとおり。
◇選者選
《河瀬俊彦・特選》
天 百年を吹いて小江戸の青田風 黒岩 裕介
地 凪の日の白波のごと半夏生 野木 和美
人 虎杖の花や小江戸の船着き場 松本 光子
《河瀬俊彦・秀逸選》
七曲り抜けて水無月祓かな 橋本 良子
甘酒を啜る古刹の午後三時 須藤 國雄
中院の散り敷くままの沙羅の花 よしだようこ
白南風や箍まだ青き醬油樽 野木 和美
鐘の音で終はるひと日や大夕焼 角田とも子
駄菓子屋の店番老女蚊遣香 鈴木 正浩
炎帝を睨んでゐたる鬼瓦 一瀬 正子
《川口 襄・特選》
天 七曲り抜けて水無月祓かな 橋本 良子
地 香水や乙女の曳きし人力車 古川みさを
人 百年を吹いて小江戸の青田風 黒岩 裕介
《川口 襄・秀逸選》
涼しさや路傍にひそと子規の句碑 小倉美恵子
夏蝶のふたつ小江戸の映画館 松本きみ枝
羅漢様と内緒の話夏木立 那須野康子
片蔭や黒漆喰の蔵の町 佐藤 良夫
夏空へからくり人形時を打つ 港 寿子
まづ水を打つて蔵見世のれん出す 小林 眞彦
石畳紫紺の蜥蜴横切れり 大須賀容子
《勝浦敏幸・特選》
天 炎天やさても大きな釘隠し 坂本ひさ子
地 白南風や箍まだ青き醬油樽 野木 和美
人 大店の奥の静謐夏のれん 小峯千枝子
《勝浦敏幸・秀逸選》
涼しさや路傍にひそと子規の句碑 小倉美恵子
本丸の枯山水や四十雀 松本 光子
白シャツの背に長き麩菓子かな 中島ますみ
中院の散り敷くままの沙羅の花 よしだようこ
虎杖の花や小江戸の船着場 松本 光子
師と訪うて早十余年鳰浮巣 半田 卓郎
まづ水を打つて蔵見世のれん出す 小林 眞彦
◇互選高得点句
第1位 15点
風鈴や茶舗の小暗き通し土間 一瀬 正子
第2位 13点
白南風や箍まだ青き醬油樽 野木 和美
第3位 12点
道灌の顎紐ゆるむ玉の汗 本庄 準也
第4位 11点
百年を吹いて小江戸の青田風 黒岩 裕介
第5位 9点
炎昼やさても大きな釘隠し 坂本ひさ子
第6位 9点
大店の奥の静謐夏のれん 小峯千枝子
第7位 9点
白抜きの屋号の涼し藍暖簾 箕輪 花凜
第7位 9点
白日傘氷川の社の恋御籤 永田 歌子
第9位 8点
虎杖の花や小江戸の船着場 松本 光子
第10位 8点
炎昼や瓦重たき蔵の町 内田 安彦
吟行俳句大会会場の様子
俳句総合誌掲載
〇「俳句」(KADOKAWA)2022年8月号
作品12句 「アミノ酸」 河瀬俊彦「爽樹」代表
樹林帯抜けて立夏の風に逢ふ
卯波立つ阿波に始まる遍路道
鎌倉の武士の矢倉や岩煙草
脱ぎかけの皮引きずつて今年竹
新句会発足
若竹や古希も傘寿も伸び盛り
岩間より上目遣ひに山椒魚
我こそが先住民とごきかぶり
噴水やオオタニサンのホームラン
湖よりの風をくぐらせ朴の花
誰が住むや青蔦の塀たかだかと
緑さす夭折画家のデスマスク
星涼し玉手箱よりアミノ酸
令和4年度代議員会の開催〈5月31日ウェスタ川越・多目的ホール〉
爽樹俳句会は、主宰を置かず任期のある代表制と合議による民主的運営を特徴としており、毎月の役員会と年度初めの代議員会が組織運営の要となります。毎年この時期に各句会幹事、役員等が集って代議員会を開催し、前年度事業報告、当年度事業計画や予算などの審議を行っております。
本年は、5月31日(火)に第13回爽樹俳句会代議員会が行われ、39句会の幹事、役員、理事、顧問、総勢48名が集いました。
はじめに河瀬代表よりあいさつがあり、「代議員会は爽樹俳句会にとって、最も大切な会議のひとつである。報告事項は簡潔にして、有意義な意見交換の場にしたい」と期待の言葉が述べられました。
本年度の主な議題は次のとおりです。
- 役員人事について
- 令和3年度事業報告について(句会の状況、行事、決算、「爽樹」誌発行状況など)
- 令和4年度事業計画について(活動方針、行事、「爽樹」誌発行計画など)
- 令和4年度予算について
- 規約の改正について
- 役員会、研修部の運営状況について
- 他結社との交流、俳句総合誌の掲載について
- ホームページについて
- テキストの改訂について、小山徳夫元代表のエッセイ集について等
昨年度に引き続き、コロナ禍で句会の中止、若しくは通信句会への切り替えなど句会運営は厳しい年度が継続されましたが、令和3年度は幸い会員数の増減がなく、句会参加者は1%減程度で運営することができました。
議事終了後、出席者の自己紹介の後、意見交換を行いました。
主な意見として、「句会間で選者の入れ替えをしたり、他句会の選者を迎え入れたりすることで緊張感が生まれ、良い刺激になるのではないか」との提案が出されました。この意見に対し、「他句会から選者を招くのは良いが、選者を入れ替えることには疑問がある」との意見もあり、幹事、選者を交え活発な議論がなされました。
さらに、句会運営にもっとインターネットを活用すべき等の提案も出されました。今年度は、「川越吟行俳句大会」、「テーマ別俳句大会」、「新年俳句大会」の開催。
また、初心者講座の開設、ホームぺージによるPRを更に進める予定です。
俳句総合誌掲載
〇「俳句四季」2022年5月号(東京四季出版)
作品16句 「命の春」 河瀬俊彦(爽樹代表)
宙を舞ふ雪代山女しなふ竿
山茱萸の光をこぼし咲みこぼし
日だまりは幸せだまり犬ふぐり
草青む子犬は鼻をうごめかせ
老木の匂ふばかりの芽吹きかな
春耕の小石ひろへばまた小石
春泥のはね一つ付けランドセル
春の日のふくらむ関東ローム層
外道とて桜うぐひを放ちけり
ころころと小石ころがす春の波
海城の濠に乗りこむ桜鯛
ぶらんこを漕げよ一番星めがけ
ゆりかごのやうなるしだれざくらかな
退院日つげられし日や辛夷咲く
春茱萸や峠を越えて登下校
ふと我に返ればひとり磯あそび
〇「俳壇」2022年5月号(本阿弥書店)
作品6句 「男の座」 半田卓郎(爽樹顧問)
荒廃の野に命継ぐ冬木の芽
雲を恋ひ雲を浮かべて薄氷
梅開く宿木は亡き男の座
一徹を通す生き方臥龍梅
燕来る枯山水の日溜りに
高々と舞ふ双蝶に空無窮
〇「俳句界」2022年6月号(文學の森)
作品10句 「雲の峰」半田卓郎(爽樹顧問)
身を捨つる美学に徹し夏椿
沖遠く泳ぐ我が子の赤帽子
白杖の人と分け合ふ片かげり
行かざりし片方の道や雲の峰
かなはざる夢は夢とし水中花
海底の珊瑚白化す沖縄忌
世に多き戦の兆し敗戦忌
断崖に途切るる隠岐の大夏野
団梯子登る山小屋月涼し
雲の囲の方形ゆがむ夕日影
〇「俳句界」2022年6月号(文學の森)
雑詠 角川春樹(「河」主宰)選
特選 鈴木正浩(爽樹会員)
長々とリードの伸びて春野かな
(選評)省略の大胆な作品だ。リードの先に愛犬がいることが想定されるが、長々と伸びたリードを画くのみにとどめている。青々とした野に来て、リードをいっぱいに伸ばしながら愛犬が喜び駆けまわっているのだ。
初心者俳句講座開催報告
令和4年4月、北浦和において「初心者のための楽しい俳句講座」を開催しました。
新聞、チラシやホームページなどを通じて参加者を募集したところ、32名の応募者がありました。
開催日時 : 令和4年4月23日(土)13:00~16:30
開催日時 : 令和4年4月27日(水)13:00~16:30
開催日時 : 令和4年4月30日(土)13:00~16:30
開催場所 : 常盤公民館(さいたま市浦和区)
講師は爽樹俳句会河瀬代表、勝浦幹事長、伊藤句会統括が務め、名句鑑賞などを混じえつつ俳句の魅力、作り方の基本を紹介しました。最終日には句会を体験していただき、盛況のうちに終了しました。
講座にご参加頂いた方が中心となり同会場において浦和句会が立ち上がりました。第1回目の句会は5月11日に行われ、受講生14名の方が参加しました。
初めての句会に最初は緊張気味だったメンバーも選句・鑑賞に入り、思い思いの感想を述べられ時には笑いがあり、和やかなうちに終了しました。
更に2名の方が6月より参加予定です。また、他9名の方は、お住まいから近くの句会に加入しました。
狭山丘陵芝桜吟行
所沢市の狭山丘陵には、狭山湖、多摩湖、更に「緑のトラスト保全活動」による多くのトトロの森があります。自然とのふれあいと開放感を味わうことが出来ます。
農耕地の間で、芝桜を育てている方がおられます。その規模の大きさに驚かされました。
白よりも紅好まるる芝桜 卓郎
山からの風を絞りて芝桜 良子
西武池袋線小手指駅南口下車、西武バス早稲田大学行き、又は宮寺西行きで「芸術総合高校」下車で同校グランド奥の丘陵地です。
里山の起伏おほひし芝桜 紀子
山裾に空引き寄せて芝桜 卓郎
よく手入れされた森には、新しい芽吹きがあり、蝶が舞い、鶯の鳴き声に癒されます。
重なれる古葉押しのけ芽吹きけり 卓郎
木漏れ日のぽつんと届く雑木の芽 紀子
木の芽張る林に一日籠もりたし 良子
(2022年4月7日、所沢地区有志吟行会)
俳句総合誌
○ 「俳壇」2022年3月号(本阿弥書店)
俳壇プレミアシート(動物) 河瀬俊彦(爽樹代表)
「春を釣る」
飯蛸を釣るは源平古戦場
釣り上げて餌より小さき眼張かな
さざ波と見しは細魚の群れの水脈
さざ波の中よりさより引つこ抜く
触れてみる磯巾着の妖しさに
◆ 作句信条
大迎なモットーは持ち合わせていないが、自分の体験をもとに平明な言葉で詠むことを心がけている。平凡な言葉であっても、それらの組み合わせによって詩が生まれ、読む人に自分の実感が伝われば、こんな嬉しいことはない。
◆ 我が師の一句
紙飛行機君へと届くまでが春 小澤克己
◆ 自身の一句
海峡の渦の底より桜鯛
○ 「俳句界」2022年3月(文學の森)
雑詠 選者中村正幸(「深海」主宰)
特選
裸木になつて初めて見ゆるもの 関口幹雄(爽樹会員)
選評
人間もそうであるが、様々な檻の中にあるとき、自由で冷静な判断は出来ない。見ゆる景色もそこでは限られてしまう。その柵を取り払ってはじめて、今まで見たことのない新しい景色が見えてくるのである。裸木となって樹々はいま真の空の美しさ、空間の素晴しさを感じたのである。
○ 「俳壇」2022年4月号 (本阿弥書店)
俳壇雑詠 加藤耕子選(「耕・Ku」主宰)
特選
端正に生きしけん二師冬ぬくし 半田卓郎(爽樹顧問)
選評
端正とは、行儀や姿が整っていて乱れたところがなく立派であること、と辞書は定義をしているが、けん二師には、何よりも心の姿を加えたい。おだやかな物腰の低い方であられた。「冬ぬくし」の季語そのままの方であった。
令和三年度テーマ別俳句大会「遊びを詠む」
令和三年度テーマ別俳句大会「遊びを詠む」
平成25年度の「祭り」から「愛・恋」、「酒」、「菓子」、「果物」、「手足」、「乗り物」をテーマとし俳句大会を続けてきました。 令和2年度は十周年記念俳句大会のため、テーマは設けませんでしたが、令和3年度は再び「遊び」をテーマに俳句大会を開催したところです。 大会には266句(133名)の作品が寄せられました。今回は受賞作品の中から一部抜粋して掲載します。
互選入賞句(選者選を加算)
1位 32点 ままごとの夫婦いつしか喜寿の春 秋山 正
2位 25点 知恵の輪のするりとぬけて去年今年 よしだようこ
3位 17点 春満月おり紙の象動きだす よしだようこ
4位 13点 一日を河童とならむ夏の川 島田 良子
5位 11点 大井川足止めくらふ絵双六 佐藤 良夫
同 白障子母に倣うて指狐 谷川 信子
同 縄電車来たよ切符は柿落葉 松本きみ枝
8位 10点 星空へ吸ひ込まれゆくソロ・キャンプ 小峰 光子
9位 10点 無心とは遊びの極み日向ぼこ 一瀬 正子
10位 10点 雪女遊んで欲しと戸をたたく 那須野康子
11位 10点 しりとりのしりきれとんぼ蚊帳の中 小林 眞彦
12位 10点 銃口は好きな子へ向け水鉄砲 町田美枝子
(8位から12位までは、選者選の特選、入選の数により決定)
選者選による特選句
石川 一郎 選(「俳句」編集長)
特選 知恵の輪のするりとぬけて去年今年 よしだようこ
(選評)
「去年今年」という季語が持つ重みを、「知恵の輪」と取り合わせ、軽妙に表現した点が斬新。「するりとぬけ」るように去年と今年が入れ替わるという感覚は鋭く、普遍的なもの。「知恵の輪」という洒落た遊び名が存分に生かされている。「ぬけて」をひらがなで表記した点も意識が行き届いており、韻律も秀逸で愛唱性も高い。
松本 佳子 選(「俳句界」副編集長)
特選 横顔を映す手花火すつと落つ 小俣惠美子
(選評)
手に持った「手花火」ではなく、その火が照らす横顔を見ています。この横顔の持ち主は、恋人なのか、つれあいなのか、子どもなのかはわかりませんが、ふと花火に照らされた顔がいつもと違うように見えて、目が離せなかったのかも知れません。日常とは違ったふとした変化への気づき。花火が落ちた後の静けさも感じられます。
安田 まどか 選(「俳壇」編集長)
特選 ゴム跳びや逆さにみゆる大夏木 安藤ユウ子
(選評)
ゴム跳びには様々な跳び方がある。前向きに踏み切る、足を引っかける、側転や逆立ちをする、等々。ここは恐らく側転ないし逆立ち跳びであろう。一瞬、天地が反転するようなダイナミックな動きにより目に飛び込んできた大夏木。青々と繁った葉が風に揺れて光っている。そんな夏の輝かしい一瞬を切り取って印象鮮明な一句。
上野 佐緒 選(「俳句四季」編集長)
特選 星空へ吸ひ込まれゆくソロ・キャンプ 小峰 光子
(選評)
一読、惹かれました。ソロ・キャンプ、一人で行くキャンプという事ですが、孤独感や寂しさはなく、開放感があります。たった一人で大自然の中にいて、頭上には満天の星空。その星空を眺めているうちに吸い込まれそうになっていく、作者の感動がストレートに伝わってきます。気持ちの良い一句でした。
河瀬 俊彦 選(爽樹代表)
特選 乳飲み子の手足遊びや秋麗 岩瀬フジ子
(選評)
子供は遊びの天才である。何でも遊びにしてしまう好奇心に驚かされる。その兆しは赤ん坊にある。生まれて数か月も経つと色も形も認識できるようになり、自分の手足の動きを見て遊び始める。その後も五感と好奇心をフル活用して遊び、学んでゆく。遊びの原点に着目したところに独自性があり、〈手足遊び〉の造語も無理がない。
勝浦 敏幸 選(爽樹幹事長)
特選 園児等の声うらがへる甘藷畑 早山きえ子
(選評)
秋空のもと、子供たちが太陽と風と畑の土に触れて全身で生きる歓びを滾らせ大声を発している。川越周辺でよく見られる光景であり、句に「遊び」らしい言葉はないが立派な遊びの姿を詠んでいる。「いも堀り」の楽しさが「声うらがへる」によって、見事に表現された。