〇「俳句」(KADOKAWA)2022年8月号
作品12句 「アミノ酸」 河瀬俊彦「爽樹」代表
樹林帯抜けて立夏の風に逢ふ
卯波立つ阿波に始まる遍路道
鎌倉の武士の矢倉や岩煙草
脱ぎかけの皮引きずつて今年竹
新句会発足
若竹や古希も傘寿も伸び盛り
岩間より上目遣ひに山椒魚
我こそが先住民とごきかぶり
噴水やオオタニサンのホームラン
湖よりの風をくぐらせ朴の花
誰が住むや青蔦の塀たかだかと
緑さす夭折画家のデスマスク
星涼し玉手箱よりアミノ酸
〇「俳句」(KADOKAWA)2022年8月号
作品12句 「アミノ酸」 河瀬俊彦「爽樹」代表
樹林帯抜けて立夏の風に逢ふ
卯波立つ阿波に始まる遍路道
鎌倉の武士の矢倉や岩煙草
脱ぎかけの皮引きずつて今年竹
新句会発足
若竹や古希も傘寿も伸び盛り
岩間より上目遣ひに山椒魚
我こそが先住民とごきかぶり
噴水やオオタニサンのホームラン
湖よりの風をくぐらせ朴の花
誰が住むや青蔦の塀たかだかと
緑さす夭折画家のデスマスク
星涼し玉手箱よりアミノ酸
爽樹俳句会は、主宰を置かず任期のある代表制と合議による民主的運営を特徴としており、毎月の役員会と年度初めの代議員会が組織運営の要となります。毎年この時期に各句会幹事、役員等が集って代議員会を開催し、前年度事業報告、当年度事業計画や予算などの審議を行っております。
本年は、5月31日(火)に第13回爽樹俳句会代議員会が行われ、39句会の幹事、役員、理事、顧問、総勢48名が集いました。
はじめに河瀬代表よりあいさつがあり、「代議員会は爽樹俳句会にとって、最も大切な会議のひとつである。報告事項は簡潔にして、有意義な意見交換の場にしたい」と期待の言葉が述べられました。
本年度の主な議題は次のとおりです。
昨年度に引き続き、コロナ禍で句会の中止、若しくは通信句会への切り替えなど句会運営は厳しい年度が継続されましたが、令和3年度は幸い会員数の増減がなく、句会参加者は1%減程度で運営することができました。
議事終了後、出席者の自己紹介の後、意見交換を行いました。
主な意見として、「句会間で選者の入れ替えをしたり、他句会の選者を迎え入れたりすることで緊張感が生まれ、良い刺激になるのではないか」との提案が出されました。この意見に対し、「他句会から選者を招くのは良いが、選者を入れ替えることには疑問がある」との意見もあり、幹事、選者を交え活発な議論がなされました。
さらに、句会運営にもっとインターネットを活用すべき等の提案も出されました。今年度は、「川越吟行俳句大会」、「テーマ別俳句大会」、「新年俳句大会」の開催。
また、初心者講座の開設、ホームぺージによるPRを更に進める予定です。
〇「俳句四季」2022年5月号(東京四季出版)
作品16句 「命の春」 河瀬俊彦(爽樹代表)
宙を舞ふ雪代山女しなふ竿
山茱萸の光をこぼし咲みこぼし
日だまりは幸せだまり犬ふぐり
草青む子犬は鼻をうごめかせ
老木の匂ふばかりの芽吹きかな
春耕の小石ひろへばまた小石
春泥のはね一つ付けランドセル
春の日のふくらむ関東ローム層
外道とて桜うぐひを放ちけり
ころころと小石ころがす春の波
海城の濠に乗りこむ桜鯛
ぶらんこを漕げよ一番星めがけ
ゆりかごのやうなるしだれざくらかな
退院日つげられし日や辛夷咲く
春茱萸や峠を越えて登下校
ふと我に返ればひとり磯あそび
〇「俳壇」2022年5月号(本阿弥書店)
作品6句 「男の座」 半田卓郎(爽樹顧問)
荒廃の野に命継ぐ冬木の芽
雲を恋ひ雲を浮かべて薄氷
梅開く宿木は亡き男の座
一徹を通す生き方臥龍梅
燕来る枯山水の日溜りに
高々と舞ふ双蝶に空無窮
〇「俳句界」2022年6月号(文學の森)
作品10句 「雲の峰」半田卓郎(爽樹顧問)
身を捨つる美学に徹し夏椿
沖遠く泳ぐ我が子の赤帽子
白杖の人と分け合ふ片かげり
行かざりし片方の道や雲の峰
かなはざる夢は夢とし水中花
海底の珊瑚白化す沖縄忌
世に多き戦の兆し敗戦忌
断崖に途切るる隠岐の大夏野
団梯子登る山小屋月涼し
雲の囲の方形ゆがむ夕日影
〇「俳句界」2022年6月号(文學の森)
雑詠 角川春樹(「河」主宰)選
特選 鈴木正浩(爽樹会員)
長々とリードの伸びて春野かな
(選評)省略の大胆な作品だ。リードの先に愛犬がいることが想定されるが、長々と伸びたリードを画くのみにとどめている。青々とした野に来て、リードをいっぱいに伸ばしながら愛犬が喜び駆けまわっているのだ。
令和4年4月、北浦和において「初心者のための楽しい俳句講座」を開催しました。
新聞、チラシやホームページなどを通じて参加者を募集したところ、32名の応募者がありました。
開催日時 : 令和4年4月23日(土)13:00~16:30
開催日時 : 令和4年4月27日(水)13:00~16:30
開催日時 : 令和4年4月30日(土)13:00~16:30
開催場所 : 常盤公民館(さいたま市浦和区)
講師は爽樹俳句会河瀬代表、勝浦幹事長、伊藤句会統括が務め、名句鑑賞などを混じえつつ俳句の魅力、作り方の基本を紹介しました。最終日には句会を体験していただき、盛況のうちに終了しました。
講座にご参加頂いた方が中心となり同会場において浦和句会が立ち上がりました。第1回目の句会は5月11日に行われ、受講生14名の方が参加しました。
初めての句会に最初は緊張気味だったメンバーも選句・鑑賞に入り、思い思いの感想を述べられ時には笑いがあり、和やかなうちに終了しました。
更に2名の方が6月より参加予定です。また、他9名の方は、お住まいから近くの句会に加入しました。
所沢市の狭山丘陵には、狭山湖、多摩湖、更に「緑のトラスト保全活動」による多くのトトロの森があります。自然とのふれあいと開放感を味わうことが出来ます。
農耕地の間で、芝桜を育てている方がおられます。その規模の大きさに驚かされました。
白よりも紅好まるる芝桜 卓郎
山からの風を絞りて芝桜 良子
西武池袋線小手指駅南口下車、西武バス早稲田大学行き、又は宮寺西行きで「芸術総合高校」下車で同校グランド奥の丘陵地です。
里山の起伏おほひし芝桜 紀子
山裾に空引き寄せて芝桜 卓郎
よく手入れされた森には、新しい芽吹きがあり、蝶が舞い、鶯の鳴き声に癒されます。
重なれる古葉押しのけ芽吹きけり 卓郎
木漏れ日のぽつんと届く雑木の芽 紀子
木の芽張る林に一日籠もりたし 良子
(2022年4月7日、所沢地区有志吟行会)
○ 「俳壇」2022年3月号(本阿弥書店)
俳壇プレミアシート(動物) 河瀬俊彦(爽樹代表)
「春を釣る」
飯蛸を釣るは源平古戦場
釣り上げて餌より小さき眼張かな
さざ波と見しは細魚の群れの水脈
さざ波の中よりさより引つこ抜く
触れてみる磯巾着の妖しさに
◆ 作句信条
大迎なモットーは持ち合わせていないが、自分の体験をもとに平明な言葉で詠むことを心がけている。平凡な言葉であっても、それらの組み合わせによって詩が生まれ、読む人に自分の実感が伝われば、こんな嬉しいことはない。
◆ 我が師の一句
紙飛行機君へと届くまでが春 小澤克己
◆ 自身の一句
海峡の渦の底より桜鯛
○ 「俳句界」2022年3月(文學の森)
雑詠 選者中村正幸(「深海」主宰)
特選
裸木になつて初めて見ゆるもの 関口幹雄(爽樹会員)
選評
人間もそうであるが、様々な檻の中にあるとき、自由で冷静な判断は出来ない。見ゆる景色もそこでは限られてしまう。その柵を取り払ってはじめて、今まで見たことのない新しい景色が見えてくるのである。裸木となって樹々はいま真の空の美しさ、空間の素晴しさを感じたのである。
○ 「俳壇」2022年4月号 (本阿弥書店)
俳壇雑詠 加藤耕子選(「耕・Ku」主宰)
特選
端正に生きしけん二師冬ぬくし 半田卓郎(爽樹顧問)
選評
端正とは、行儀や姿が整っていて乱れたところがなく立派であること、と辞書は定義をしているが、けん二師には、何よりも心の姿を加えたい。おだやかな物腰の低い方であられた。「冬ぬくし」の季語そのままの方であった。
令和三年度テーマ別俳句大会「遊びを詠む」
平成25年度の「祭り」から「愛・恋」、「酒」、「菓子」、「果物」、「手足」、「乗り物」をテーマとし俳句大会を続けてきました。 令和2年度は十周年記念俳句大会のため、テーマは設けませんでしたが、令和3年度は再び「遊び」をテーマに俳句大会を開催したところです。 大会には266句(133名)の作品が寄せられました。今回は受賞作品の中から一部抜粋して掲載します。
互選入賞句(選者選を加算)
1位 32点 ままごとの夫婦いつしか喜寿の春 秋山 正
2位 25点 知恵の輪のするりとぬけて去年今年 よしだようこ
3位 17点 春満月おり紙の象動きだす よしだようこ
4位 13点 一日を河童とならむ夏の川 島田 良子
5位 11点 大井川足止めくらふ絵双六 佐藤 良夫
同 白障子母に倣うて指狐 谷川 信子
同 縄電車来たよ切符は柿落葉 松本きみ枝
8位 10点 星空へ吸ひ込まれゆくソロ・キャンプ 小峰 光子
9位 10点 無心とは遊びの極み日向ぼこ 一瀬 正子
10位 10点 雪女遊んで欲しと戸をたたく 那須野康子
11位 10点 しりとりのしりきれとんぼ蚊帳の中 小林 眞彦
12位 10点 銃口は好きな子へ向け水鉄砲 町田美枝子
(8位から12位までは、選者選の特選、入選の数により決定)
選者選による特選句
石川 一郎 選(「俳句」編集長)
特選 知恵の輪のするりとぬけて去年今年 よしだようこ
(選評)
「去年今年」という季語が持つ重みを、「知恵の輪」と取り合わせ、軽妙に表現した点が斬新。「するりとぬけ」るように去年と今年が入れ替わるという感覚は鋭く、普遍的なもの。「知恵の輪」という洒落た遊び名が存分に生かされている。「ぬけて」をひらがなで表記した点も意識が行き届いており、韻律も秀逸で愛唱性も高い。
松本 佳子 選(「俳句界」副編集長)
特選 横顔を映す手花火すつと落つ 小俣惠美子
(選評)
手に持った「手花火」ではなく、その火が照らす横顔を見ています。この横顔の持ち主は、恋人なのか、つれあいなのか、子どもなのかはわかりませんが、ふと花火に照らされた顔がいつもと違うように見えて、目が離せなかったのかも知れません。日常とは違ったふとした変化への気づき。花火が落ちた後の静けさも感じられます。
安田 まどか 選(「俳壇」編集長)
特選 ゴム跳びや逆さにみゆる大夏木 安藤ユウ子
(選評)
ゴム跳びには様々な跳び方がある。前向きに踏み切る、足を引っかける、側転や逆立ちをする、等々。ここは恐らく側転ないし逆立ち跳びであろう。一瞬、天地が反転するようなダイナミックな動きにより目に飛び込んできた大夏木。青々と繁った葉が風に揺れて光っている。そんな夏の輝かしい一瞬を切り取って印象鮮明な一句。
上野 佐緒 選(「俳句四季」編集長)
特選 星空へ吸ひ込まれゆくソロ・キャンプ 小峰 光子
(選評)
一読、惹かれました。ソロ・キャンプ、一人で行くキャンプという事ですが、孤独感や寂しさはなく、開放感があります。たった一人で大自然の中にいて、頭上には満天の星空。その星空を眺めているうちに吸い込まれそうになっていく、作者の感動がストレートに伝わってきます。気持ちの良い一句でした。
河瀬 俊彦 選(爽樹代表)
特選 乳飲み子の手足遊びや秋麗 岩瀬フジ子
(選評)
子供は遊びの天才である。何でも遊びにしてしまう好奇心に驚かされる。その兆しは赤ん坊にある。生まれて数か月も経つと色も形も認識できるようになり、自分の手足の動きを見て遊び始める。その後も五感と好奇心をフル活用して遊び、学んでゆく。遊びの原点に着目したところに独自性があり、〈手足遊び〉の造語も無理がない。
勝浦 敏幸 選(爽樹幹事長)
特選 園児等の声うらがへる甘藷畑 早山きえ子
(選評)
秋空のもと、子供たちが太陽と風と畑の土に触れて全身で生きる歓びを滾らせ大声を発している。川越周辺でよく見られる光景であり、句に「遊び」らしい言葉はないが立派な遊びの姿を詠んでいる。「いも堀り」の楽しさが「声うらがへる」によって、見事に表現された。
〇「俳句界」(文學の森)
2022年2月号 作品10句
一瀬正子(爽樹編集長)
小江戸
時雨るるや小江戸に多き抜小路
冬うらら茶舗に小机小座布団
手相見の手持ち無沙汰や年の市
鬼瓦に挑む一羽の初雀
天井の竜のひと鳴き寒波来る
老い様はそれぞれ風の枯はちす
日溜りの羅漢の肩に蝶の凍つ
刃物屋の玻璃戸に寒の薄日差
日脚伸ぶ木目の浮き出す大鳥居
棹菓子のあかねがさねや春隣
〇「俳壇」(本阿弥書店)
2022年2月号
俳壇雑詠 今瀬剛一 選(対岸主宰)
特選 河瀬俊彦(爽樹代表)
遠富士のことに輝く今朝の冬
選者評
立冬の感触をよく情景化している。直感であろう。遠くに見える富士山を「ことに輝く」と表現している。いつもと違って取り分け輝いて見えたのだ。いい感性をしている。澄んで引き締まった空気の感触が快い。
〇「俳句」 (株式会社KADOKAWA)
2022年2月号
令和俳壇 星野高士 選(「玉藻」主宰)
推薦 河瀬俊彦(爽樹代表)
酒盛りにはじまる漁夫の冬支度
選者評
漁夫と聞いただけで酒豪という感じが伝わってくる。海の上なのか、地上なのかはわからないが景気の良さの溢れている作品。妙味なのは冬支度という季語。酒盛りをしたらどことなく冬の支度も垣間見える。作者のものの見方も丁寧で、しっかりと詠んでいた。
狭山丘陵は、埼玉県と東京都にまたがる独立した丘陵地で、市街地の中に浮かぶ「緑の島」のように残された首都圏を代表する重要な自然環境です。ここに作られた施設は「狭山丘陵生き物ふれあいの里」です。
「センターエリア」の他、八国山から多摩湖、狭山湖にいたる地域で、「水鳥の楽園」「虫たちの森」「湿生植物の里」「雑木の森」「蝶の森」の5スポットがあります。
今回、〈10月23日〉所沢鍛錬句会が吟行を行ったセンターエリアは、西武狭山線下山口駅から15分程の丘陵地の森林にあり、鳥類、動物などの剝製が多数展示された学習施設、句会場とした会議室があり、隣接して荒幡富士(富士塚)、浅間神社があります。荒幡富士の吟行句を紹介します。
荒幡富士(富士塚)を詠む
富士塚より富士をはるかに櫟の実 山口昌志
遠富士の襞きはやかに鵙日和 河瀬俊彦
頂は人をこぼさじ薄紅葉 松代忠博
きちきちは荒幡富士を飛ぶ構へ 半田卓郎
東京のベッドタウン・所沢にあり、明治32年に富士信仰によって築かれた人工の山で、麓からの高さは11mです。山頂からは本物の富士山をはじめ、西武ドームが目の前に見えます。富士塚は2~3mのものが多く、この高さのものは珍しく「東京付近随一の傑作」と称されています。
明治政府の意図した、神社合祀による村民の民心統一のために村民たちの手により、明治17年から延べ1万人が参加して行なわれました。もつこ(持籠)に土をいれてバケツリレーのように運び笊に土を入れて積み上げ、すべては村民たちの手作業で行われました。およそ15年の歳月をかけて、高さ11メートルに自らの手で完成しました。大正12年、関東大震災で8合目まで崩れましたが、2年がかりで修復されました。
明治の文豪、大町桂月は、何度となくこの地を訪れ、この眺望を褒め称えたとのことです。大正10年3月には、大町桂月の撰文で「荒幡新富士築山の碑」が建てられています。
八州の我に朝する青葉かな 桂月
戦後は一時荒れるに任せた状態になったこともありました。しかし、その都度住民が総出で復興にあたり、原形の保存に努めてきました。平成23年(2011年)の東日本大震災後も一部修復が行われました。現在は地域住民の皆さんが結成した「荒幡富士保存会」により、定期的に大掃除やパトロールなどが実施されています。
完(文責;半田卓郎)