第14回(令和5年度)爽樹俳句会代議員会開催報告〈5月31日ウェスタ川越・多目的ホール〉

5月31日(水)、第14回(令和5年度)爽樹俳句会代議員会が行われ、今年は、40句会の幹事、役員、理事、顧問、選者、総勢48名が集いました。

合議制の運営をしている爽樹では、年に1度の代議員会は総会に相当する重要な組織としての意思決定の場です。

会に先立ち、小山徳夫顧問の『季語随想などエッセイ集』出版祝賀会が執り行われました。全会員のお祝いの気持ちとして、記念品などが贈呈されました。

河瀬俊彦代表より小山徳夫顧問に記念品贈呈

代議員会冒頭、河瀬代表からの挨拶では爽樹が発足した平成22(2010年)年12月の第1回目の代議員会に触れ、出席者が何倍にも増えていることを例に爽樹俳句会の発展について述べました。

特に令和5年度特筆すべきことは、会員の対前年11%増加で、浦和新句会発足、既存句会の会員増加、会員増加キャンペーンなど関係者の努力の成果が出ております。

開会のあいさつをする河瀬代表

本年度の主な議事事項は次のとおりです。

・役員人事について

・令和4年度事業報告について(句会の状況、行事、決算、「爽樹」誌発行状況など)

・令和5年度事業計画について(活動方針、行事、「爽樹」誌発行計画など)

・令和5年度予算について

以上の議事事項につきまして、満場一致で採決されました。

続いて次の報告事項がありました。

・役員会、研修部の運営状況について

・他結社との交流、俳句総合誌の掲載について

・句集出版のおすすめ

・ホームページについて

今年度は、「テーマ別俳句大会」からテーマ・季節を問わない「爽樹俳句大会」への衣更へ、コロナ禍に影響を受けない新しい形の「新春俳句大会」を計画しています。

また、会員の高齢化等の環境変化に適応する対策を講ずる目的で昨年度から「改善検討委員会」が発足し、初心者のためのサポート句会もスタートしています。

議事終了後、出席者の自己紹介の後、意見交換を行いました。

初心者のための3句投句制(通常は5句)新設について議論したほか、会員募集のアイデア、ホームページへの要望など様々な提案がありました。また、句集を出版した方より経験談を聞くこともできました。

代議員会模様

以上

令和五年度俳人協会埼玉県支部俳句大会

令和五年五月三日 於 さいたま文学館(桶川市)

事前投句の部(「爽樹」入選者)

 三位  鉛筆を耳に戻して鰹糶る       川口  襄

 六位  そよ風を着流すやうに春ショール   佐藤 良夫

 八位  山眠るふところ深く銃の音      黒岩 裕介

 十位  住み古りしここもふるさと初桜    小倉美恵子

 十五位 大いなる野火のはじめの火種かな   坂本ひさ子

当日句の部(「爽樹」入選者)

 黒岩裕介選 特選

 栗原憲司選 特選

 夕暮れは明日の入り口桐の花      河瀬 俊彦

田口 登選 特選

母の日や母は教師でありつづけ      田中 康雄

令和五年度俳人協会埼玉県支部俳句大会

令和5年5月3日、さいたま文学館(桶川市)において俳人協会埼玉県支部俳句大会が催されました。

事前投句の部の「爽樹」入選者は次のとおりです。

 第三位  鉛筆を耳に戻して鰹糶る       川口 襄

 第六位  そよ風を着流すやうに春ショール   佐藤良夫

 第八位  山眠るふところ深く銃の音      黒岩 裕介

 第十位  住み古りしここもふるさと初桜    小倉美恵子

 第十五位 大いなる野火のはじめの火種かな   坂本ひさ子

当日句の部の入選者は、次のとおりです。

黒岩裕介選 特選

栗原憲司選 特選

 夕暮れは明日の入り口桐の花    河瀬 俊彦

田口登選 特選

 母の日や母は教師でありつづけ   田中 康雄

俳句総合誌掲載

〇「俳句」KADOKAWA  2023年5月

令和俳壇 推薦 森田純一郎選(「かつらぎ」主宰)

   祈る者祈らるる者阪神忌   黒岩裕介(爽樹)

【選評】

平成七年一月十七日早朝に兵庫県南部地方で発生したM七・三の大震災は、六千四百人を超える死者・行方不明者を出し、宝塚市の私の家にも避難命令が出された。震災後二十八年が経過した今もその日には鎮魂の祈りを上げ続ける。


〇「俳壇」本阿弥書店 2023年5月

俳壇ワイド作品集  今月の有力同人

   ふきのたう    黒岩裕介(爽樹)

  灯台の細身うつくし春岬

  舟運の今は昔や冴返る

  日溜りを少し広げてふきのたう

  うすらひに翳る命のほの明り

  耕しを尽くして天の広さかな

  牡丹の芽いつか喧嘩をしかけさう

  人の世は赦しゆるされ桃の花


〇「俳句界」文學の森 2023年4月

全国の秀句コレクション

  厨の灯消してちちろに闇返す   山崎京子(爽樹)

俳句総合誌掲載

〇「俳句四季」東京四季出版 2023年4月

「特集 575は突然に 俳人誕生STORY」

どんなきっかけ、どんなタイミングで俳句を始めたか

 かなかなや主なき庭の給餌台   「爽樹」代表 河瀬俊彦

[要旨]

俳句を始めて三か月目の作品、何とか俳句が続けられそうだと思えた句である。

 受講した初心者講座で印象に残ったのは俳句の四つの基本型(藤田湘子考案)である。この基本型は自分の思いを俳句にする際の強力な助っ人を得た気持ちだった。

掲句は、私と同年齢で良く垣根越しに話しをしていた隣のご主人が亡くなった時の私の心境を詠んだものである。基本型の助けがなければ俳句にする事ができなかっただろうと今でも思っている。

俳句総合誌掲載

〇「WEP俳句通信」vol.132

珠玉の七句   河瀬俊彦(爽樹代表)

  冬の水

湧水のやがてせせらぎ冬すみれ

せせらぎの返す木漏れ日青木の実

水底に落葉綾なすアラベスク

水琴窟の音となりたる冬の水

みづうみは鳥の楽園山眠る

沼の皺と見えたるものは初氷

雪掻に工場の朝の始まりぬ

狭山湖

〇「俳壇」2023年3月号(本阿弥書店)

現代俳句の窓   谷川信子(爽樹会員)

  薄化粧

空耳に起こさるる朝花ぐもり

うららけし予定なき日の薄化粧

花菜風明日の出会ひを夢占

ぬかるみのごとき当節陽炎燃ゆ

春愁や小さきポッケに青い鳥

一日の起承転結目刺焼く

令和4年度テーマ別俳句大会「旅を詠む」

令和4年度は「旅を詠む」をテーマに俳句大会が開催され、爽樹俳句会会員から256句(128名)の作品が寄せられました。

6名の選者による特選と選評、および互選入賞句の上位7位までは次のとおりです。

特選と選評

石川 一郎選 『俳句』編集長

特選 旅のやど寝返る先の去年今年    よしだようこ

(選評)寝返りというある一瞬の、なんでもない造作と、悠久の、且つまた、繰り返される当たり前の生活実感としての時の流れ、というものが絶妙に響きあっていると感じました。「先の」という接続も、地味ながら実に練られたもので、去年今年と言えばこの句、という忘れられない一句となりました。

上野 佐緒選 『俳句四季』編集長

特選 停泊の船の痩せゆく炎天下      早山きえ子

(選評)まず、「船の痩せゆく」という表現が素晴らしい。私はこのような表現を俳句で見たことがなかった。炎天下、真夏の暑い盛りである。あらゆるものが暑さで歪んでゆくように見える。港に停泊する船もまた。暑さを活写するような一句でどこか格調も感じさせる。

奥田 洋子選 『俳壇』編集発行人 

特選 宇宙へと旅立つここち蚊帳の中    黛  道子   

(選評)蚊帳の藍色と穏やかに波をうつベールが、宇宙を思わせるのだろう。その想像力の柔軟さと、蚊帳から宇宙への飛躍の大きさが魅力的。実際に旅へ行けなくとも、蚊帳の中から広々とした旅へ誘われる。

松本 佳子選 『俳句界』副編集長

特選 宇宙へと旅立つここち蚊帳の中    黛  道子

(選評)蚊帳の中は、薄布一枚で日常から隔絶された気分になります。その中に居ることを「宇宙へと旅立つここち」と表現。180度囲われている状況が、プラネタリウムと似ているためか、はたまた蚊帳の中の静けさが、宇宙空間へ心を飛ばしたのか。小さな空間から大きな宇宙へ旅立つ心地は素晴しいものだっただろう、と推察します。

河瀬 俊彦選 爽樹俳句会代表

特選 葛の雨壱岐に出会ひし曽良の墓    三宅 照一

(選評)奥の細道に随行した曽良の終焉の地は壱岐である。幕府巡見使の随員として壱岐を訪れた曽良はそこで病を得て、客死したのである。この句の独自性は自分の旅先で曽良の人生の旅に思いを馳せるという、旅の入れ子構造になっていることだが、「葛の雨」も効いており、今回のテーマ詠にふさわしい秀句である。

勝浦 敏幸選 爽樹俳句会幹事長

特選 祖父の待つ島の桟橋花みかん     谷川 信子

(選評)船から身を乗り出すように桟橋に祖父の姿を探す。近づくにつれて、はっきりと祖父の姿が見える。島は今蜜柑の花盛り。緑の中に白い小さな花がたくさんついているのが分かる。作者の心は懐かしさで一杯になる。「花みかん」の爽やかな芳香がよみがえる。祖父との想い出が次々と湧き起こる。平明に景を詠んで深い情を滲ませた。

互選入賞句(上位7位までを抜粋)

1位 23点 夜濯も慣れて八十路の一人旅       秋山  正     

2位 17点 祖父の待つ島の桟橋花みかん       谷川 信子

3位 17点 ふる里ももはや旅人法師蟬        新井 春枝

4位 16点 風花やあの日の宿はダムの底       小林 恵子

5位 14点 広島がヒロシマとなる秋の旅       河瀬 俊彦

5位 14点 生くるとは戻れざる旅二重虹       半田 卓郎

7位 14点 かりがねや絵筆を洗ふ千曲川       岩淵  彰

先師小澤克己を偲ぶ竹寺俳句大会(飯能市・八王寺)

令和4年11月4日(金)、埼玉県飯能市の竹寺(八王寺)にて竹寺俳句大会が34名の参加を得て開催されました。コロナ禍により開催することが出来なかった十周年記念事業の一つとして、ようやく今年度実施されたものです。

まず句碑の前で法要、献花をし、続いて小山顧問から句碑建立までのお話がありました。

その後の懇親会では、竹の器に盛られた精進料理、竹筒のお薬湯が供されました。

先師小澤克己句碑「竹伐るや昨日と明日の真ん中で」の前にて

 

挨拶する河瀬代表



河瀬俊彦選

(特選句)

師の句碑の文字美しき竹の春    山口昌志

(秀逸句)

山茶花や孫弟子吾も句碑拝す    土門秀子

貴公子めく竹の一本秋気澄む    内藤紀子

師の種の大樹となりし秋の山    伊藤弘幸

そつと触る先師の句碑や暮の秋   箕輪花凜

この紅葉きつと先師の贈物     大須賀容子



川口 襄選

(特選句)

竹の春明日のための今日があり   野木和美 

(秀逸句)

竹騒のさやかな声や克己句碑    小峰光子

竹伐りて言葉の森のしるべとす   河瀬俊彦

師系とふえにし貴し檀の実     小林眞彦

金秋の風と先師に会ひに来し    加藤つね子

竹春や先師の句碑の大きこと    黒岩裕介



小山徳夫選

(特選句)

竹林の蒼き静寂や暮の秋      山口昌志

(秀逸句)

師の句碑を抱く竹林秋気満つ    早山きえ子

師の句碑は秋光となり空は晴    港 寿子

克己碑に寄り添ふごとき真弓の実  本庄準也

師の詩魂しかと心に新松子     早山きえ子

盤石な句碑晩秋の風の中      坂本ひさ子



橋本良子選

(特選句)

銀河へと続く道あり竹林に     横山百江

(秀逸句)

小春日や句碑に供養の鉦の音    須藤國雄

吹き変はる千年の風竹の春     小倉美恵子

師の句碑を抱く竹林秋気満つ    早山きえ子

紅葉かつ散る遠嶺のとこしへに   阿部昭子

竹眼鏡に探す師の影秋気澄む    川口 襄

懇親会の様子

俳句総合誌掲載

〇「俳句四季」2022年11月号(東京四季出版)

「巻頭句」 河瀬俊彦 (「爽樹」代表)

 うつし世の塵を浮かべて水澄めり

 葛の花ロストボールをまぬがるる

 どんぐりの青きまま落ち転がれり



〇「俳壇」2022年11月号(本阿弥書店)

「現代俳句の窓」

「時を刻む」 勝浦敏幸(「爽樹」幹事長)

 職人の静脈太き残暑かな

 老成はまだ先のこと法師蟬

 ムックりの流るるコタン星流る

 週末へ時を刻むや鉦叩

 秋茄子や灰汁に染まりし母の指

 戸隠の杉の参道霧時雨



〇「俳句界」2022年12月号(文學の森)

作品6句「ガラスの小瓶」 橋本良子(「爽樹」顧問)

 つんつんと籾殻焼きの薄煙

 窓際に硝子の小瓶星冴ゆる

 立爪の指輪いづこに冬の星

 夜回りのしんがり星を叩きつつ

 白壁に星影ゆるる枯尾花

 裸木となり未来ある星探す



〇「俳壇」2022年12月号(本阿弥書店)

句集出版よもやま話 河瀬俊彦(「爽樹」代表)

 深きより海神のこゑ箱眼鏡

(要旨)第一句集「箱眼鏡」の句集名は、この句に因った。瀬戸内海の小島で育った私は、夏になると水中眼鏡をかけ、素潜りで魚やサザエを捕って遊んでいた。又船べりから海を覗くと、海の底から様々な音楽が聞こえてきた。これらの音と学生時代に読んだ「きけわだつみのこえ」の<こえ>を重ねて詠んだものである。私は、出来るだけ自分の体験に基づいて句を詠みたいと思っている。

句集を出版して気づいたことがある。「個性は意識して出すものではなく、作品の中に自然に滲みでるものである」「隠そうとしても隠しきれずに,滲み出るのが個性である」ということである。自分の言葉で、自分の体験で感じたことを、平明な言葉で詠むと言う今までのやり方を続けようと思っている。



〇「俳壇」2023年1月号(本阿弥書店)

現代俳句の窓

「菊日和」 小山陽子(「爽樹」会員)

 霧深き高千穂に打つ柏手を

 千年を超ゆる大杉鳥渡る

 息継いで色なき風の奥の宮

 機織の音響きをり柿の晴

 亡き母は七人姉妹秋桜

 歳月を共にせし櫛菊日和



〇「俳句界」2022年11月号(文學の森) 

雑詠 柴田多鶴子(「鳰の子」主宰)選

特選 河瀬俊彦(「爽樹」代表)

 桟橋にひたと波音夜の秋   

(選評)夏の終りに秋の気配を感じとるのは、五感のうちどれが一番鋭敏であろうか。      この作者は、桟橋に打ち寄せるかすかな波の音(聴覚)によって感じとった。暑さの極みに次に訪れる季節を思うのはいかにも俳句らしい。夜風の肌触りにも、季節のうつろいを感じる頃である。 



〇「俳壇」2022年12月号(本阿弥書店)

雑詠 山田貴世(「波」主宰)選

特選 河瀬俊彦(「爽樹」代表)

 枝豆の殻の数ほど捨てし夢

(選評)ビールの抓みには持って来いの枝豆。いつの間にかお皿の上には山積みの枝豆の殻。その殻を見て脳裏に過った数々の事柄は全て夢に終わってしまったのだ。中七下五の措辞に作者の言い知れぬ感慨が滲み出た。



〇「俳壇」2023年1月号(本阿弥書店)

雑詠 藤田直子(「秋麗」主宰)選

特選 半田卓郎(「爽樹」顧問)

 早稲香るドア全開の始発駅

(選評)発車ベルが鳴るまで、始発駅では列車のドアを全開にしている。そのドアから 早稲の香が入ってきたという。田園地帯を走る路線の始発駅なのだろう。「早稲」「前開」「始発駅」と言う言葉が明るい未来を感じさせる。