○「俳句四季」 東京四季出版2024年3月号
3月の季語 「爽樹」河瀬俊彦
(春の季語8種に付き著者の作品とエッセー及び写真を2頁に掲載)
〈春の水〉
春の水掛くれば笑まふ不動尊
地底より生まれたてなる春の水
〈卒業〉
あしたには島を出る子ら卒業す
〈春耕〉
春耕の背を伸ばせば瀬戸の海
春耕の小石拾へばまた小石
〈春の鴨〉
ふるさとに帰る気もなし春の鴨
ときをりは友呼ぶやうに春の鴨
〈蜷の道〉
蜷の道江戸の古地図に迷ひ込む
地上絵の謎とけぬまま蜷の道
〈芽柳〉
芽柳の少年ほどの色であり
芽柳の揺れて海月の触手かな
〈土筆〉
立子忌の武蔵野に摘む土筆かな
土筆摘む顔をあぐればスカイツリー
〈虎杖〉
虎杖を折ればわらべの頃の音
○「俳壇」本阿弥書店2024年3月号
俳壇雑詠 年間賞
(令和5年1月から12月号掲載の選者特選作品を対象とし選者ごとに選ぶ年間優秀作品)
藤田直子選(人) 「秋麗」主宰
早稲香るドア全開の始発駅 半田卓郎「爽樹」
【選評】発車ベルが鳴るまで、始発駅では列車のドアを全開にしている。そのドアから早稲の香が入ってきたという。田園地帯を走る路線の始発駅なのだろう。「早稲」「全開」「始発駅」という言葉が明るい未来を感じさせる。