渋沢栄一のふるさと、深谷の市内吟行

渋沢栄一(しぶさわ えいいち)
・1840年3月16日~1931年11月11日(91歳没) 
 「一身にして二生を経る」とは渋沢栄一を指していう言葉でしょう。幕末の世で農民に生まれ、尊王攘夷に目覚め、倒幕運動に邁進するも運動は挫折。その後、なんと後の将軍一橋慶喜に仕え、幕臣となります。この間パリ―万博に招待された慶喜の弟昭武の使節団に庶務・会計係として随行しました。 
 この見聞が、栄一の人生を大きく変えることになりました。明治維新後は新政府に迎えられ大蔵省において財政など様々な制度作りに取り組みます。4年後官界の硬直した体制に限界を感じ、実業界へ転身します。第一国立銀行〈現在のみずほ銀行〉をはじめ、東京海上、帝国ホテル、キリンビールにサッポロビールなど、生涯で設立・育成した会社は500社をこえます。
企業のみならず、証券取引所、日本赤十字社、一橋大学、日本女子大学の設立など、社会福祉活動、さらに国際親善にも尽力しました。
 生涯を通じて基本理念は、「論語」の精神であり「私利を追わずに公益を図る」という信念のもと、日本国の基礎を築いた最大の功労者です。2024年に発行される新紙幣の1万円札の肖像に選ばれました。

渋沢栄一生家(中の家)と論語の里(深谷市)吟行コース

大河ドラマ館から順次論語の里循環バスにより下記のように縁の場所を吟行しました。 深谷駅北口→大河ドラマ館(論語の里循環バス)→生家(中の家(なかんち))→諏訪神社・青淵公園・渋沢栄一記念館・鹿島神社・尾高淳忠生家・誠之堂・清風亭→深谷駅北口
  (註:『青淵』は栄一の雅号)
栄一が育った中の家と7歳から論語を習いに通った尾高淳忠生家の周辺にはゆかりの史跡が数多くあり、「論語の里」と呼んでおります。    

小山徳夫顧問作品
 蓼藍の花や紙幣の青淵像
 (生家の庭の鉢植えの藍の花) 

特選(小山徳夫顧問選)

秋雲の赤城山(あかぎ)を望む青淵像         小峰 光子

(渋沢栄一記念館の裏に立つ像)

菊日和瀟洒な亭の瑠璃かはら       内藤 紀子

(「誠之堂」の屋根)

出立の凛々しき像や万年青の実       本庄 準也

(生家の裏に立つ青年像)

涸れ井戸に療治伝説小鳥来る       河瀬 俊彦

(鹿島神社の境内の大欅の枯株の井戸)

そぞろ寒熱あつ頼む煮ばうたう   本庄 準也 

(生家の隣にある麵屋「忠兵衛」栄一の好物)

の風爽やかに招魂碑              小峰 光子

(生家の庭にある栄一の父の顕彰碑) 

旧渋沢邸 中の家(なかんち)
渋沢栄一の生家、多忙な栄一が帰郷の
際に滞在した部屋は残されております。

尾高淳忠生家
栄一の10歳上の従弟、栄一が7歳から論語を習う。学問の先生として栄一に大きな影響を与えた。
後に明治政府民部省に入り、富岡生糸場設立にかかわり初代場長を務めた。

渋沢栄一「青天を衝け」深谷大河ドラマ館
(深谷生涯学習センター・深谷公民館)
撮影風景やドラマシアター、ドラマの進行に合わせて展示内容は更新されます。

清風亭
渋沢栄一は、国立第一銀行の創立者、初代頭取です。2代目の佐々木頭取が栄一の古希祝に、大正15年に建築しました。
外観は。白壁に鼻黒煉瓦、屋根には瑠璃色のスパニッシュ瓦を葺かれています。
関東大震災後の鉄筋建築として、貴重であり、埼玉県有形文化財指定を受けています

渋沢栄一記念館
平成7年〈1995年11月11日・栄一の祥月命日〉に開館しました。
栄一の遺墨や各種資料、写真が多数展示されています。講義室では、アンドロイドの渋沢栄一の講義を聴くことができます。

渋沢栄一のアンドロイド
人間そっくりのロボットで、栄一の講義を聴くことができます。

深谷駅
深谷市出身の実業家「渋沢栄一」の顕彰と、煉瓦を活用したまち作りを
進める深谷市にとって、シンボル的な存在の深谷駅です。
深谷産の煉瓦で作られた東京駅をモチーフとしたレトロな駅舎はインパクトが大きい。

新1万円札
2024年から発行予定。

渋沢栄一像  (青淵広場)

完(文責 半田卓郎)

俳句総合誌掲載

○総合誌「俳句四季」(東京四季出版)

 2021年10月号「今月の華」

 河瀬俊彦「どんぐりの願い」    

  団栗のやがて大樹の尖りかな

要旨
ゴルフのプレー中たまたま一つ拾い上げたどんぐり。よく見ると先端が尖っており、ここから芽が出て大樹になることに気づいた。これをもとに詠んだ初心の頃の一句である。 爽樹誌創刊に編集委員として参加したが、この句は爽樹の応援歌のようで当時から愛着がある。 爽樹は、令和3年1月創刊十年を迎え新体制となった。創立時に策定した「爽樹の理念」を継承しながら、新メンバーで知恵を絞り、協力しあって次なる発展を目指している。 この句に対する愛着が、ますます増している今日この頃である。
代表 河瀬俊彦

総合誌「俳壇」(本阿弥書店)

 2021年10月号「現代俳句の窓」

 松本きみ枝作品「はたた神」6句掲載

   ひと鞭を我が海馬へとはたた神

   梅雨明けて俄に星は声上ぐる

   忘るるといふ涼しさよ美酒満たす

   さびしむとうちの金魚はうたひ出す

   人並みの副反応かところてん

   古すだれ我が身ごろんと放り置く 



総合誌「俳壇」(本阿弥書店)

 2021年11月号「現代俳句の窓」

 黒岩裕介作品 「神慮」6句掲載

  雲の峰人に未完といふ神慮

  向日葵に老の背丈を測らるる

  八月の風鈴夜々の独り言

  人生の集まるベンチ山椒の実

  鉦叩生家に父母の息づかひ

  水音は村の語り部稲の花


総合誌「俳句四季」(東京四季出版)
 2021年11月号「句のある風景」

松本きみ枝作品 「黒山三滝」 
修験道   5句掲載

 一礼の深々と滝飛沫浴ぶ

 ひぐらしの鳴きかはしをり修験道

 山の気の只中にゐる木樵虫

 小春日の茶屋に干されし小座布団

 岩場経て杖やすまする落葉路

越生町の(おっ)()川支流に,男滝、女滝、天狗滝の3つを総称して黒山三滝がある。昔は山岳宗教修験道の拠点ともなっていたようである。 黒山三滝の周辺の谷は狭いが道は整備され、小規模ながらも深山の趣がありよい気を得ながら吟行できる。


総合誌「俳句界」(文學の森)

 2021年10月号「投稿欄・雑詠」

 稲畑廣太郎選「特選」 梅雨

 梅雨寒やワインの栓の鈍き音   金子慶子

(選者選評要旨:ワインはコルクを通してボトルの中で熟成が進むデリケートな酒である。勿論季節にも関係していてこの句はワインの栓を通して、梅雨の季節を見事に表現している。)             

 今瀬剛一選「特選」 

 郭公や林の中のレストラン       河瀬俊彦

(選者選評要旨:情景がとてもよく見える。まず郭公の声が強調され、辺り一帯にひびき渡る。更にレストラン自体の存在が明確になってくる。いかにもおいしい料理が出そうである。)


総合誌「俳句界」(文學の森)

 2021年11月号「投稿欄・雑詠」

 西池冬扇「特選」 

 ぷうと息洩れて草笛終はりけり 河瀬俊彦

(選者選評要旨:草笛の吹き方もいろいろあります。蒲公英のように空洞の茎を利用するのもあるし、薄い葉を手の間で振動させることも。この句はたぶん後者でしょう。このように吹きそこないを句にしたのは、誰しもが経験するだけに面白い。上手くなると旋律をかなでるコトもできます。)


総合誌「俳句界」(文學の森)

 2021年11月号 「作品10句」

   月祀る     小林眞彦

  快晴を告ぐる予報士赤い羽根

  在来種帰化種花野を分かち合ふ

  葛の蔓伸びて虚空を探りをり

  草の絮飛んで疫病(えやみ)のなき星へ

  住みづらき世を面白く瓢の笛

  草の花ニューノーマルを生きてゆく

  むらさきに暮るる盆地や葡萄熟る

  月祀る月のしづくの白ワイン

  流星の行方はゴビか崑崙か

  左手になじむ胡桃や季寄せ繰る


総合誌「俳句」(KADOKAWA)

 2021年11月号 「令和俳壇」

 小林貴子 選 (「岳」編集長)

 推薦 竹夫人意外と我に好意的 横山百江

(選者選評:この「夫人」、うちの夫とは仲良くしたいみたいだけれど、私のことは無視するの…と思っていたんだけれど、急に私にも打ち解けて来たわ・・・といった妄想劇場が止まらなくなってしまった。)

朝妻 力 選 (「雲の峰」主宰・「春耕」)

 推薦 万緑と鳥声友に徒日和  阿部昭子

(選者選評要旨:(かち)は乗り物を使わずに歩くこと。万葉集などには徒歩とも表記されています。外出自粛下、人出の少ない郊外への吟行でありましょう。目に万緑、耳に鳥声を楽しみながらの吟行。(徒日和)がこよなく効果的です。)

完(文責 半田卓郎)