第4回爽樹吟行俳句大会(小江戸川越)

川越市は大正十一年に誕生した県内初の市で、当時の人口は三万人。現在は人口三十五万人を超える中核都市となっている。

今年は、十二月に県内で初めて市制百周年を迎える。

この記念すべき年の6月29日にウェスタ川越において、第四回爽樹吟行俳句大会が、72名の参加を得て盛大に開催された。

挨拶する河瀬代表


4人の選者選及び参加者互選(選者選加算)の結果は次のとおり。

◇選者選

《河瀬俊彦・特選》

天 百年を吹いて小江戸の青田風   黒岩 裕介 

地 凪の日の白波のごと半夏生    野木 和美

人 虎杖の花や小江戸の船着き場   松本 光子

  《河瀬俊彦・秀逸選》

七曲り抜けて水無月祓かな    橋本 良子

甘酒を啜る古刹の午後三時    須藤 國雄

中院の散り敷くままの沙羅の花  よしだようこ

白南風や箍まだ青き醬油樽    野木 和美

鐘の音で終はるひと日や大夕焼  角田とも子

駄菓子屋の店番老女蚊遣香    鈴木 正浩

炎帝を睨んでゐたる鬼瓦     一瀬 正子

  

《川口 襄・特選》

天 七曲り抜けて水無月祓かな    橋本 良子      

地 香水や乙女の曳きし人力車    古川みさを

人 百年を吹いて小江戸の青田風   黒岩 裕介

  《川口 襄・秀逸選》

涼しさや路傍にひそと子規の句碑 小倉美恵子

夏蝶のふたつ小江戸の映画館   松本きみ枝

羅漢様と内緒の話夏木立     那須野康子

片蔭や黒漆喰の蔵の町      佐藤 良夫

夏空へからくり人形時を打つ   港  寿子

まづ水を打つて蔵見世のれん出す 小林 眞彦                  

石畳紫紺の蜥蜴横切れり     大須賀容子


《勝浦敏幸・特選》

天 炎天やさても大きな釘隠し    坂本ひさ子

地 白南風や箍まだ青き醬油樽    野木 和美

人 大店の奥の静謐夏のれん     小峯千枝子

  《勝浦敏幸・秀逸選》

涼しさや路傍にひそと子規の句碑 小倉美恵子

本丸の枯山水や四十雀      松本 光子

白シャツの背に長き麩菓子かな  中島ますみ

中院の散り敷くままの沙羅の花  よしだようこ

虎杖の花や小江戸の船着場    松本 光子

師と訪うて早十余年鳰浮巣    半田 卓郎

まづ水を打つて蔵見世のれん出す 小林 眞彦


互選高得点句

第1位 15点

 風鈴や茶舗の小暗き通し土間   一瀬 正子

第2位 13点

 白南風や箍まだ青き醬油樽    野木 和美

第3位 12点

 道灌の顎紐ゆるむ玉の汗     本庄 準也

第4位 11点

 百年を吹いて小江戸の青田風   黒岩 裕介

第5位 9点

 炎昼やさても大きな釘隠し    坂本ひさ子

第6位 9点

 大店の奥の静謐夏のれん     小峯千枝子

第7位 9点

 白抜きの屋号の涼し藍暖簾    箕輪 花凜

第7位 9点

 白日傘氷川の社の恋御籤     永田 歌子

第9位 8点

 虎杖の花や小江戸の船着場    松本 光子

第10位 8点

 炎昼や瓦重たき蔵の町      内田 安彦

吟行俳句大会会場の様子

俳句総合誌掲載

〇「俳句」(KADOKAWA)2022年8月号

 作品12句 「アミノ酸」  河瀬俊彦「爽樹」代表

  樹林帯抜けて立夏の風に逢ふ

  卯波立つ阿波に始まる遍路道

  鎌倉の武士の矢倉や岩煙草

  脱ぎかけの皮引きずつて今年竹

   新句会発足

  若竹や古希も傘寿も伸び盛り

  岩間より上目遣ひに山椒魚

  我こそが先住民とごきかぶり

  噴水やオオタニサンのホームラン

  湖よりの風をくぐらせ朴の花

  誰が住むや青蔦の塀たかだかと

  緑さす夭折画家のデスマスク

  星涼し玉手箱よりアミノ酸