第7回爽樹吟行俳句大会(氷川神社・大宮公園)

令和7年6月30日、第7回爽樹吟行俳句大会が、さいたま氷川神社・大宮公園を吟行地として開催されました。

氷川神社は埼玉県下及び東京都下、神奈川県下に280数社ある氷川神社の総本社です。「大いなる宮居」として大宮の地名の由来にもなった、2400年以上の歴史をもつといわれる日本でも指折りの古社です。 

武蔵一宮として関東一円の信仰を集め、初詣には多くの参拝客で賑わいます。広大な境内は約3万坪、参道は中山道の「一の鳥居」から約2kmにわたる長さを誇ります。また、高さ13mの木造の「二の鳥居」は明治神宮より寄贈移築されたものです。

「大宮公園」は明治18年、埼玉県最初の県営公園として誕生しました。園内には、樹齢百年を超える赤松がそびえる赤松林や、 名物の1,000本もの桜をはじめ、新緑や紅葉が美しい樹木がたくさんあり、四季おりおりの変化が楽しめます。また、野球場、 サッカー場、弓道場、小動物園、児童遊園地などもあり、地域に根ざした県営公園として親しまれています。

二の鳥居
楼門

また、氷川神社では半年間の罪穢れを祓い清める大祓式が執り行われていました。

茅の輪くぐり
大宮公園

大会当日は猛暑にもかかわらず、句会場の高鼻コミュニティセンターに会員77名が集い、大会は盛大に開催されました。

勝浦敏幸代表あいさつ
句会模様

勝浦敏幸代表 特選句

天          十八丁緑蔭に人溶けゆける      黒岩裕介

地          佇めば神の声して夏祓        港 寿子

人          走り根に丁石傾ぐ青葉闇       阿部裕子

河瀬俊彦名誉顧問 特選句

天          羽化したる心地茅の輪を潜り抜け   小林眞彦

地          をさな顔ゐし薫風の巫女溜り     加藤つね子

人          逆しまの丹の橋よぎる緋鯉かな    村田菊子

一瀬正子編集長 特選句

天          羽化したる心地茅の輪を潜り抜け   小林眞彦

地          吟遊の師のゆく影か梅雨の蝶     河瀬俊彦

人          をさな顔ゐし薫風の巫女溜り     加藤つね子

黒岩裕介顧問 特選句

天          佇めば神の声して夏祓        港 寿子

地          吟遊の師のゆく影か梅雨の蝶     河瀬俊彦

人          羽化したる心地茅の輪を潜り抜け   小林眞彦

俳句総合誌掲載

〇「俳句」KADOKAWA 2025年4月号

作品8句

 「人魚」    川口襄(爽樹)

犬ふぐり夜は星空へ紛れ入る

髪型はいずれも螺髪つくしんぼ

流氷の軋み人魚の慟哭か

地球儀を廻し弥生を引き寄する

淡月のとなり地球の浮いてをり

蜃気楼竜宮城の崩落す

漁火は星に重なり蛍烏賊

春愁や文楽人形肩で泣き

俳句総合誌掲載

〇「俳壇」2025年4月号

特集 行楽の春―春の行事季語を探る 勝浦敏幸(爽樹)

ビキニデー以後磯松の黒すぎる  宮坂静生(岳)

季語「ビキニデー」(傍題「ビキニ忌」)は、『新版角川俳句大歳時記春』(令和四年二月二十八日初版発行)に掲載されているが、ほとんど知られていない季語である。

ビキニデーとは、昭和二十九年(1954)三月一日、太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁で、アメリカが水爆実験を行った日のことである。

 この日、マグロのはえ縄漁を操業中の焼津の漁船「第五福竜丸」は被爆し、乗組員全員の二十三人が原爆症となり、久保山無線長は九月に亡くなった。

 令和六年十二月十日、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は、令和六年のノーベル平和賞を受賞した。ビキニデーを契機に国民的に盛り上がった原水爆禁止運動の中で、昭和三十一年(1956)に本協議会が設立されている。

 磯松は、低木状の多年草で古い幹は黒く黒松に似ているという。海岸の近くの岩場や隆起したサンゴ礁に生える。飛沫のかかるようなところでも生育できるという。

 あの悲惨な結果をもたらした海の向こうの水爆実験の死の灰が磯松の幹を一層黒くしているに違いないと作者。「黒すぎる」のは核実験そのものでもある。

令和7年新春俳句大会・講演会・句集出版祝賀会の開催

令和7年1月29日、標記大会がウェスタ川越において、96名の爽樹会員の参加の下、「知音」代表西村和子様と喜怒哀楽書房・木戸敦子様を来賓にお迎えし、盛大に開催されました。

  爽樹俳句会 勝浦敏幸代表挨拶

「知音」主宰 西村和子氏 講演 題「季語で読む源氏物語」

内容は、西村和子様の講演、第2回爽樹俳句大会の表彰、新春俳句大会の表彰、昨年句集を出版された勝浦敏幸代表と鈴木孝雄さんの祝賀会など盛りだくさんで、参加者は温かいコーヒーやお茶を飲みながら楽しい一時を過ごしました。

とりわけ、西村和子様の「季語で読む源氏物語」と題された講演は、季語がBGMのように「源氏物語」の情景を奏でているという指摘が新鮮で、大変貴重なお話しを伺うことができました。

第2回爽樹俳句大会の結果

爽樹俳句大会 (爽樹俳句会選者17名による選)

大 賞      角乗りの蹴上げて白き秋の水  木村 順子
優秀賞 大白鳥湖抱くやうに着水す  黛  道子
 同 子規庵の庭は千里の花野かな  市川 善之
佳作賞 はらからの古稀喜寿傘寿菊の宿  木村 吉子
 同 遠汽笛月より使者の来る気配   松本きみ枝
 同 在宅の看取りの決意梅二月  田辺喜見夫
 同 葉桜の風漕艇の水しぶき  本庄 準也

互選賞 (選者を除く参加者による互選)

第一位  笑はせてほろりとさせて村芝居   川口  襄
第二位  大白鳥湖抱くやうに着水す   黛   道子
第三位  湯巡りの地図になき道こぼれ萩   桜井 葉子
 同 独り居に一つの月のあるばかり   勝浦 敏幸
第五位  脱稿の窓全開の虫の秋    関口 幹雄
 同 流れより魚影の速し秋の水   武笠 光宏
 同 半衿は夢二の絵柄初句会   橋本 良子

新春俳句大会(当日句)の結果

西村和子選        
 特 選 電線に一小節の寒雀 黒岩 裕介
木戸敦子選       
 特 選 初鏡この顔好きになつてをり 田辺喜見夫
勝浦敏幸選       
 特 選 獏枕鯨が空を飛んでゐる  川口  襄
河瀬俊彦選       
 特 選 皺の手に悴む子の手包みこむ 粕谷 純子

俳句総合誌掲載

〇「俳句四季」 2025年2月号

「今月の華」 爽樹代表 勝浦敏幸

「狼よをらば輪廻を修しめよ」 

滅んだと思われるオオカミが、もし生きているのであれば、古代より続く生態系、生と死の連鎖をあるべき姿に正せと懇願している。

俳句総合誌掲載

〇「俳句界」 文學の森 2025年2月号

雑詠  西池冬扇「ひまわり」会長選

特撰 

ひらがなの大きく小さく星祭 (爽樹)小川悦子

【選評】平易な言葉で星祭(七夕まつりのことだ)の趣をよく表出している。子供が書いた短冊であろう。願い事が大きさの不揃いだが元気いっぱいのひらがなで墨書されている。私は星祭というと七夕の世界より「銀河鉄道の夜」が呼びさます宇宙を彷徨ってしまう。

俳句総合誌掲載

〇「俳句界」 文學の森 2025年1月号

雑詠  西池冬扇「ひまわり」会長選

特選

大きな葉大きな露の動きけり  小川悦子(爽樹)

【選評】大きな芋の葉であろう。七夕の風習で、願い事のための芋の葉に宿った露を集めて墨を磨り、文字を書くことがある。古い行事で特に江戸期には良く行われていたそうであるが、このごろは珍しくなったのかもしれない。芋の葉にのった露は動きがありおもしろい。

俳句総合誌掲載

〇「俳句」KADOKAWA 2024年11月号

作品12句

 「長瀞・秋の七草寺」    河瀬俊彦(爽樹)

秋草の七寺めぐれば花浄土

なでしこの寺の空ゆくロープウェー

をみなへし美男揃ひの六地蔵

千の墓つつむ万余の萩万朶

すぐそこと葛の寺まで三千歩

ラフティングの子らの歓声沢胡桃

茎太し兜太の郷の曼殊沙華

色変へぬ相生の松幾星霜

浄土へと銀河を渡る舟の欲し

いわし雲ポプラのやうな人であれ

雨戸繰る音がどこかで綾子の忌

初さんま放たば泳ぎ出しさうな


〇「俳句」KADOKAWA 2024年11月号

令和俳壇11月推薦

選者 井上康明「郭公」代表

風死せり忘れたきこと思ひ出す  小林恵子(爽樹)

【推薦選評】夏の昼、風が止んで死んだような静かな時間が過ぎる。そんな時、記憶から葬り去ってしまいたい思い出がふと蘇る。苦々しい思いを噛みしめながら、じっとり汗ばむ思いでいる。