第4回爽樹研修旅行

「井上井月ゆかりの地と伊那谷の美しい自然を訪ねる」(平成27年5月7日~8日)

幕末維新の乱世を風狂に生き・死んだ俳人井上井月。
井月が三十有余年を過ごした伊那を訪れ、美しい自然に当時を偲び、150年を経たその作品に想いを新たにする事が出来た。1泊2日のバス旅行に爽樹会員35人が参加し現地での句会を楽しんだ。

桜の名所で井月の句碑がある。「何処やらに鶴の声聞く霞かな」

一望の伊那谷、蝶の舞う、麦畑を通り 井月の墓参りへと歩む。

井月の墓 (自然石の丸い墓石が2つ重ねてある)

明治20年伊那・塩原家で66年の生涯を終えた。
磨滅して判読できないが、墓石に刻まれている句
「降るとまで人には見せて花曇り」

井月墓所にある表示板

花と緑の川越吟行俳句大会 開催

俳人協会埼玉県支部主催  平成27年9月26日(土) 川越やまぶき会館

爽樹俳句会が、地元結社として事務局を担当しました。
事前投句者225名(投句450句)、当日参加者134名(投句402句)。
幸い前日の雨が晴れて、吟行日和で、盛会裡におえることができました。

特選句・高点句から

〈事前投句〉

特選句から

   栗原憲司選
夏つばめ小江戸育ちを誇りをり神崎 康光
   杉良介選
今に聞く江戸の鐘の音かき氷小峰 光子
   川口襄選
ジオラマの街を彷徨ふ蟻の影本田 久美

高点句から

ふだん着の母しか知らず茄子の花小黒 黎子
長き夜のおのずと母の辺に集ふ吉田 静子
秋の海風より白き貝を売る龍野 龍

〈当日句〉

特選句から

   稲田眸子選
秋祭待つ校庭の大きな木星井千恵子
   小山徳夫選
白露は武士の涙か野戦跡阿部 昭子
   佐怒賀直美選
前をゆく棒菓子の丈秋の天星井千恵子

高点句から

川越を空つぽにして稲雀ふだん着の母しか知らず茄子の花黒岩 裕介
喜多院の鶯張りも秋の声佐々木建成
秋声を聞く福耳の羅漢さま増田 信義

所沢鍛練句会:石神井公園吟行句会

平成27年10月31日

当句会は、年間6回の定点観測吟行句会を計画し、4回は航空記念公園、
2回は石神井公園を吟行している。
石神井公園は、前回5月初夏の吟行会で、ゲスト選者として小山名誉顧問にも参加戴いた。
今回の晩秋の吟行会は、ゲスト選者として東京鍛練梓句会の環順子さんに参加いただいた。

晩秋の石神井公園は、紅葉も始まっており特に小鳥の楽園であった。

特選句から

   環順子選
楝の実鳴るや曇天明るくす水野あき子
桂黄葉匂へば母の冬仕度茂木 勲
泛びでて流離を悟るかいつぶり松代 忠博
   半田卓郎選
森閑と時うつろへり秋翡翠水野あき子
名木の気根にふれし十月尽環 順子
城跡に姫の涙や草紅葉片岡 啓子
三宝寺池(撮影:半田 卓郎)
沼杉(落羽松)の気根(撮影:半田 卓郎)

「爽樹」創刊五周年を迎えて

ごあいさつ    川口 襄(「爽樹」代表)

 お蔭様で小誌「爽樹」が平成二十八年一月で創刊五周年を迎えさせて戴き、これも偏に日頃からご支援をいただいている俳壇の諸先生及び諸先輩ならびに「爽樹」会員皆々様のご厚情の賜物と深く感謝申し上げます。
 さて平成二十三年一月、「爽樹」を創刊の折、①小澤主宰より受け継いだ「情景主義」という俳句の詩精神を継承しこれを極める。②主宰は置かず任期のある代表制のもと、合議制による会の運営を行うことをお約束し、新しい俳句結社の在り方を模索してまいりました。
 その足取りは甚だ遅々たるものではございますが、こうして皆様と共に五周年を迎えられたことは感無量です。五年の間に多くの学びがあり、多くの出会いがあり、豊かな心の交流を行うことが出来たことを喜びたいと思います。
 これからも皆様方の更なるご指導・ご厚誼をいただき、十周年へ向け確かな歩みを進めてまいります。よろしくお願い申し上げます。

新しい結社の在り方を求めて    小山 徳夫 (名誉顧問)

“「遠嶺」は一誌一代。名前を変えて、せっかく集まっている人が何百人もいるんだから…”の言葉を残して小澤克己主宰は急逝されてしまいました。
 その言葉を受けて、遠嶺時代の主要同人が何回もの役員会を開いて出した結論は、「主宰を置かない任期のある代表制と集団指導体制での同人誌的な運営」であり、小澤主宰の第二句集名をいただき「爽樹」は発足しました。
 その運営には不安もありましたが、むしろその様な運営は「これからの俳句会(結社)のあるべき姿」と前向きに考え、毎月開く役員会、毎月数回の編集会議、年一回の代議員会(句会幹事会)などによる組織的な運営の中で、「あるべき姿」を求めて、いろいろと新しい方策を試みているうちに、いつの間にか五年の月日が経ちました。
 「爽樹」は「〇〇主宰の結社」ではなく、「自分たちの結社」であり、代表の交代により何時までも継続し、発展していくことのできる結社であります。
 五周年を迎えるに当たっての「記念事業基金」も目標額を上回り、「合同句集」への参加者も予定数を上回っていることは、「爽樹」は「自分たちの結社」という意識が浸透している証であると嬉しく思っております。

十 哲

汚れなき空一塊の帰燕あり
青鷹顕れて山河を引き締むる
辿り来て嶺まだ遠し冬の虹
湖は晏如の塒白鳥来
街灯に人のぬくもり夜鷹蕎麦
鶏旦の曙光まぶしき爽樹かな
磯波をあかねに染めて大初日
初茜大漁節の戻り来る
ふくろふの言ひ訳けを聴く夜の帳
春の野往かむ十哲に支へられ

爽 樹 立 つ

初東風や確と根を張り爽樹立つ
旭光の長汀曲浦初松籟
佳き返事の予感ポストに積もる雪
大氷柱割つて木霊を目覚めさす
蒼穹の一箇所破砕して冬日
雪原の駅夕照の浅間山
オリオンの盾の落ちゐる山の湖
潮騒に覚め水仙に逢ひにゆく
「早春賦」口ずさみつつ梅探る
それぞれに妻得て春を待つ雄鴨

「爽樹」創刊五周年記念事業について

  昨年は多くの会員の参加によって五年の歩みともいえる五周年記念『合同句集』が出版されました。
 今後の記念事業は左記を予定しております。皆様方のご参加、ご協力をお願い致します。

◆記念事業のご案内

一、小澤克己七回忌法要・俳句大会(当日句のみ) ―― -平成二十八年四月十七日(日)飯能市・竹寺

二、「爽樹」創刊五周年記念式典ならびに祝賀会 ――― 平成二十八年五月二十九日(日)アルカディア市ヶ谷
     式典にて「記念コンクール」「新年俳句大会」入賞発表・句集出版表彰
     祝賀会にて「『酒』を詠む俳句大会」入賞発表

三、「爽樹」創刊五周年記念研修旅行(三保の松原) ―― 平成二十八年九月二十七日(火)・二十八日(水)(予定)

俳人金子兜太のふるさと皆野を巡る

専用列車で行く秩父俳句ツアーに参加して(平成28年1月30日)

去るⅠ月30日(土)西武鉄道サービス社の主催で、西武鉄道の専用列車で、「俳人金子兜太のふるさと皆野を巡る」俳句ツアーが開催された。

参加者は、各地からの71名でその内爽樹会員が19名であり主として所沢から参加した。

専用列車で池袋始発・練馬・ひばリケ丘・所沢と停車し、秩父鉄道に乗入れ、直通で皆野に到着。車中で事前句1句投句、同乗の俳人の橋本栄治・横澤放川の両氏から事前句を見ての若干のコメントがあった。

皆野吟行は、兜太氏の父の伊昔紅氏の病院と住居である、壺春堂、更に円明寺、ヤマブ(味噌)、椋神社など、それぞれの場所にある兜太句碑を巡り作句した。皆野文化会館に戻り、昼食、吟行句1句投句。1時からホールで、秩父音頭を始め歌と踊りの演目の数々が賑やかにあり、ついで兜太氏の講演会後、橋本・横澤両氏も加わり入選句の発表と続き、3時に終了した。

皆野では、地元ボランテイアと説明役の中高生など町を挙げてのイベントであった。

兜太氏の講演は、この地での父母との生活、俳句との出会いなど産土の地への思いの溢れた話、更に戦争体験から反戦平和を貫くことなど、知力と気力は、96歳の年齢を感じさせない。

金子兜太選3句の内1句に、爽樹の大森英さん(所沢翔詠句会所属)の次の句が選ばれた。

与太が来た母の歓喜や冬晴るる大森 英

尚この句は西武車両内に掲示される。

円明寺

真中の句碑:
  常の顔つねの浴衣で踊りけり  金子伊昔紅

皆野椋神社

翔詠句会:川越吟行

平成28年3月22日

三月二十二日の定例句会は、いつもの新所沢公民館を離れて小江戸川越を散策する吟行句会となりました。見所の多い蔵の町川越ですが、まづ皆で揃って訪れたのは名刹喜多院。江戸城大奥の建物を移築したという御殿の佇まい、趣きのある枯山水の庭、五百羅漢の様々な表情。なによりも私たちが驚嘆したのは庫裡の前の見事な枝垂れ桜でした。

   

小澤克己七回忌法要と俳句大会

於・竹寺(平成28年4月17日)

竹寺は、正式には「医王山薬寿院八王寺」と称します。奥武蔵俳句寺としても

 有名で、神仏習合の姿を今に残す東日本唯一の寺です。

当日は、鶯や数多の囀りのなか、山桜、つつじを始め数多の花盛りで
 正に「花の寺・花浄土」の竹寺でした。
 先師のご冥福をいのり、句碑に先師をしのび、吟行と句会を楽しみ爽樹の絆を固めた一日でした。

爽樹俳句会・五周年記念事業を終えて

アルカディア市ヶ谷 (平成28年6月25日)

1年半前から企画し準備してきた各種記念事業も、5月29日の記念祝賀会をもって終了しました。

この間の皆さまのご協力ご支援に深く感謝申し上げます。五周年事業は、将来へのステップ、将来の糧となるものであります。実施した主な事業は次の5項目からなります。

一、合同句集の刊行  

 応募した会員143名の作品「自選20句」は、会員の切磋琢磨の結晶であり爽樹俳句の一里塚でもあります。

二、28年1月記念増大号刊行

 創刊の経緯の座談会・情景主義論考・5年間の総括、足取り、全句会の概要記事などの180頁の増大号 

三、各種コンクールの開催 (俳句・論文・エッセーなど) 

四、先師小澤克己七回忌法要 {竹寺}と俳句大会

五、記念式典及び祝賀会

 5月29日アルカデイア市ケ谷で、午前中記念式典・句集出版お祝い会を開催し、同日午後、記念祝賀会を開催しました。祝賀会は、来賓38名・爽樹会員94名の参加で盛大に実施することが出来ました。皆さまのお蔭で五周年事業の仕上げとして心に残る祝賀会となりました。

十周年に向けて、爽樹の力を結集して「意気軒昂な十周年」を迎えられるように皆さんとともに努めたいと思います。ご支援ご協力の程宜しくお願い申し上げます。    

爽樹創刊5周年記念式典・句集出版祝賀会
爽樹創刊5周年祝賀会

第5回爽樹研修旅行

世界遺産・三保の松原と富士山の眺望(平成28年9月27日~28日

  今年度の研修は爽樹会員36名が参加。秋雨が続いたなか、天気にも恵まれ「爽樹晴」の下での旅行となった。
  三保の松原は、平成25年6月に世界文化遺産に登録された。松原の海岸への入口に「神社」が祀られて、その境内に「神の道」が続いている。  
  砂嘴からは霊峰富士山がくっきりと姿を現していた。伝説の「羽衣の松」は柵に囲まれ現在は三代目。
宿泊先焼津グランドホテルでは、四時半より一日目の句会、引き続き七時から夕食と懇親会。
翌朝、午前六時恒例の早朝吟行、朝食後ホテルを出発、島田市の大井川にかかる蓬莱橋へ。この橋は英国ギネス社認定、 世界一長い木造の橋である。橋の先の森に「長寿の鐘」があり、NHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のロケ地となった場でもある。
  帰路由比桜エビ会館で二日目の句会を行い、すべての予定を終えた。

特選句 一覧
 第一日目 : 席題「天」を含め四句出句

   川口 襄 選 「天・地・人」
波音は天女の嘆き秋の浜秋山 正
秋の空三保の天女はお出掛け中三間菜々絵
天女には天女の思ひ秋の空よしだようこ
   半田 卓郎 選 「天・地・人」
淡粧の富士を仰ぎて九月尽村田 菊子
股覗きして秋麗の富士の山小林 眞彦
老松のくの字への字や秋日傘黒岩 裕介
   大曽根育代 選 「天・地・人」
左手に富士右手に白波天高し花島 陽子
富岳呑むばかりに三保の秋怒濤黒岩 裕介
身の内のかすかに青む秋の海橋本 良子
   小林眞彦 選 「天・地・人」
駿河路の旅天恵の秋日和小山 徳夫
色変へぬ松や天女の忘れ雲大曽根育代
秋澄むや砂嘴の松原天に延ぶ齊藤 博之

特選句 一覧
 第二日目 : 三句出句

   川口 襄 選 「天・地・人」
秋風となつて大川渡りけり小峰 光子
一川を統ぶる一橋律の風小峰 光子
現世の流れの早さ秋の川勝浦 敏幸
   半田 卓郎 選 「天・地・人」
秋日和良き風良き橋良き仲間小峰 光子
薄紅葉愛ふたたびと鐘鳴らす小林 久子
仙境に遊ぶ木橋や秋高し大曽根育代
   大曽根育代 選 「天・地・人」
川風や江戸引き寄する葛の蔓髙畑 信子
蓬莱橋芒吹かるる空のあり水野あき子
渡り来し橋は過去なり秋の空川口  襄
   小林眞彦 選 「天・地・人」
虫の音と和すせせらぎの朝かな田巻 和子
やはらかき風の橋梁秋の声齊藤 博之
まだ青き蜜柑を捥げば海の香も沼崎 邦子
三保の松原砂嘴より

三保羽衣神の道

第4回爽樹所沢合同句会

於・所沢愛宕の杜ふれあい館  参加者44名(平成28年 11月29日)

   特別賞(ところ賞)
白鳥来とうに切れたるパスポート木村 順子
   鈴木すぐる・特選
咳込めば忽ち背に小さき掌渡辺 市子
ひたすらに陽を集めをり木守柿明田川節子
   川口襄・特選
白鳥来とうに切れたるパスポート木村 順子
その話聞いたと言へずおでん酒河瀬 俊彦
   小山徳夫・特選
湯豆腐の鍋も小ぶりに二人の夜秋山 正
棒立ちの風のぬけがら枯芭蕉水野あき子
   半田卓郎・特選
実むらさき珠の数ほど懸想して小室 誠
冬帽に手を触るだけの訣れかな木村 順子
   橋本良子・特選
さくさくと詩の生まるる霜の道松本きみ枝
大安の湯島天神菊日和伊藤 麻子
   環 順子・特選
日向ぼこいつしか母と同じこと若月 和代
その話聞いたと言へずおでん酒河瀬 俊彦