俳句総合誌掲載

〇「俳句」KADOKAWA 2024年11月号

作品12句

 「長瀞・秋の七草寺」    河瀬俊彦(爽樹)

秋草の七寺めぐれば花浄土

なでしこの寺の空ゆくロープウェー

をみなへし美男揃ひの六地蔵

千の墓つつむ万余の萩万朶

すぐそこと葛の寺まで三千歩

ラフティングの子らの歓声沢胡桃

茎太し兜太の郷の曼殊沙華

色変へぬ相生の松幾星霜

浄土へと銀河を渡る舟の欲し

いわし雲ポプラのやうな人であれ

雨戸繰る音がどこかで綾子の忌

初さんま放たば泳ぎ出しさうな


〇「俳句」KADOKAWA 2024年11月号

令和俳壇11月推薦

選者 井上康明「郭公」代表

風死せり忘れたきこと思ひ出す  小林恵子(爽樹)

【推薦選評】夏の昼、風が止んで死んだような静かな時間が過ぎる。そんな時、記憶から葬り去ってしまいたい思い出がふと蘇る。苦々しい思いを噛みしめながら、じっとり汗ばむ思いでいる。