俳句総合誌

 ○ 「俳壇」2022年3月号(本阿弥書店)

  俳壇プレミアシート(動物) 河瀬俊彦(爽樹代表)

「春を釣る」

   飯蛸を釣るは源平古戦場

   釣り上げて餌より小さき眼張かな

   さざ波と見しは細魚の群れの水脈

   さざ波の中よりさより引つこ抜く

   触れてみる磯巾着の妖しさに

◆ 作句信条
大迎なモットーは持ち合わせていないが、自分の体験をもとに平明な言葉で詠むことを心がけている。平凡な言葉であっても、それらの組み合わせによって詩が生まれ、読む人に自分の実感が伝われば、こんな嬉しいことはない。

◆ 我が師の一句

   紙飛行機君へと届くまでが春  小澤克己

◆ 自身の一句

   海峡の渦の底より桜鯛



○ 「俳句界」2022年3月(文學の森)

   雑詠  選者中村正幸(「深海」主宰)

特選
裸木になつて初めて見ゆるもの  関口幹雄(爽樹会員)

選評
人間もそうであるが、様々な檻の中にあるとき、自由で冷静な判断は出来ない。見ゆる景色もそこでは限られてしまう。その柵を取り払ってはじめて、今まで見たことのない新しい景色が見えてくるのである。裸木となって樹々はいま真の空の美しさ、空間の素晴しさを感じたのである。



○ 「俳壇」2022年4月号 (本阿弥書店)

  俳壇雑詠  加藤耕子選(「耕・Ku」主宰)

特選
端正に生きしけん二師冬ぬくし  半田卓郎(爽樹顧問)

選評
端正とは、行儀や姿が整っていて乱れたところがなく立派であること、と辞書は定義をしているが、けん二師には、何よりも心の姿を加えたい。おだやかな物腰の低い方であられた。「冬ぬくし」の季語そのままの方であった。