○総合誌「俳句四季」(東京四季出版)
2021年10月号「今月の華」
河瀬俊彦「どんぐりの願い」
団栗のやがて大樹の尖りかな
要旨 ゴルフのプレー中たまたま一つ拾い上げたどんぐり。よく見ると先端が尖っており、ここから芽が出て大樹になることに気づいた。これをもとに詠んだ初心の頃の一句である。 爽樹誌創刊に編集委員として参加したが、この句は爽樹の応援歌のようで当時から愛着がある。 爽樹は、令和3年1月創刊十年を迎え新体制となった。創立時に策定した「爽樹の理念」を継承しながら、新メンバーで知恵を絞り、協力しあって次なる発展を目指している。 この句に対する愛着が、ますます増している今日この頃である。 代表 河瀬俊彦 |
○総合誌「俳壇」(本阿弥書店)
2021年10月号「現代俳句の窓」
松本きみ枝作品「はたた神」6句掲載
ひと鞭を我が海馬へとはたた神
梅雨明けて俄に星は声上ぐる
忘るるといふ涼しさよ美酒満たす
さびしむとうちの金魚はうたひ出す
人並みの副反応かところてん
古すだれ我が身ごろんと放り置く
○総合誌「俳壇」(本阿弥書店)
2021年11月号「現代俳句の窓」
黒岩裕介作品 「神慮」6句掲載
雲の峰人に未完といふ神慮
向日葵に老の背丈を測らるる
八月の風鈴夜々の独り言
人生の集まるベンチ山椒の実
鉦叩生家に父母の息づかひ
水音は村の語り部稲の花
○総合誌「俳句四季」(東京四季出版)
2021年11月号「句のある風景」
松本きみ枝作品 「黒山三滝」
修験道 5句掲載
一礼の深々と滝飛沫浴ぶ
ひぐらしの鳴きかはしをり修験道
山の気の只中にゐる木樵虫
小春日の茶屋に干されし小座布団
岩場経て杖やすまする落葉路
越生町の越辺川支流に,男滝、女滝、天狗滝の3つを総称して黒山三滝がある。昔は山岳宗教修験道の拠点ともなっていたようである。 黒山三滝の周辺の谷は狭いが道は整備され、小規模ながらも深山の趣がありよい気を得ながら吟行できる。
○総合誌「俳句界」(文學の森)
2021年10月号「投稿欄・雑詠」
稲畑廣太郎選「特選」 梅雨
梅雨寒やワインの栓の鈍き音 金子慶子
(選者選評要旨:ワインはコルクを通してボトルの中で熟成が進むデリケートな酒である。勿論季節にも関係していてこの句はワインの栓を通して、梅雨の季節を見事に表現している。)
今瀬剛一選「特選」
郭公や林の中のレストラン 河瀬俊彦
(選者選評要旨:情景がとてもよく見える。まず郭公の声が強調され、辺り一帯にひびき渡る。更にレストラン自体の存在が明確になってくる。いかにもおいしい料理が出そうである。)
○総合誌「俳句界」(文學の森)
2021年11月号「投稿欄・雑詠」
西池冬扇「特選」
ぷうと息洩れて草笛終はりけり 河瀬俊彦
(選者選評要旨:草笛の吹き方もいろいろあります。蒲公英のように空洞の茎を利用するのもあるし、薄い葉を手の間で振動させることも。この句はたぶん後者でしょう。このように吹きそこないを句にしたのは、誰しもが経験するだけに面白い。上手くなると旋律をかなでるコトもできます。)
○総合誌「俳句界」(文學の森)
2021年11月号 「作品10句」
月祀る 小林眞彦
快晴を告ぐる予報士赤い羽根
在来種帰化種花野を分かち合ふ
葛の蔓伸びて虚空を探りをり
草の絮飛んで疫病のなき星へ
住みづらき世を面白く瓢の笛
草の花ニューノーマルを生きてゆく
むらさきに暮るる盆地や葡萄熟る
月祀る月のしづくの白ワイン
流星の行方はゴビか崑崙か
左手になじむ胡桃や季寄せ繰る
○総合誌「俳句」(KADOKAWA)
2021年11月号 「令和俳壇」
小林貴子 選 (「岳」編集長)
推薦 竹夫人意外と我に好意的 横山百江
(選者選評:この「夫人」、うちの夫とは仲良くしたいみたいだけれど、私のことは無視するの…と思っていたんだけれど、急に私にも打ち解けて来たわ・・・といった妄想劇場が止まらなくなってしまった。)
朝妻 力 選 (「雲の峰」主宰・「春耕」)
推薦 万緑と鳥声友に徒日和 阿部昭子
(選者選評要旨:徒は乗り物を使わずに歩くこと。万葉集などには徒歩とも表記されています。外出自粛下、人出の少ない郊外への吟行でありましょう。目に万緑、耳に鳥声を楽しみながらの吟行。(徒日和)がこよなく効果的です。)
完(文責 半田卓郎)