〇「俳句界」(文學の森)
2022年2月号 作品10句
一瀬正子(爽樹編集長)
小江戸
時雨るるや小江戸に多き抜小路
冬うらら茶舗に小机小座布団
手相見の手持ち無沙汰や年の市
鬼瓦に挑む一羽の初雀
天井の竜のひと鳴き寒波来る
老い様はそれぞれ風の枯はちす
日溜りの羅漢の肩に蝶の凍つ
刃物屋の玻璃戸に寒の薄日差
日脚伸ぶ木目の浮き出す大鳥居
棹菓子のあかねがさねや春隣
〇「俳壇」(本阿弥書店)
2022年2月号
俳壇雑詠 今瀬剛一 選(対岸主宰)
特選 河瀬俊彦(爽樹代表)
遠富士のことに輝く今朝の冬
選者評
立冬の感触をよく情景化している。直感であろう。遠くに見える富士山を「ことに輝く」と表現している。いつもと違って取り分け輝いて見えたのだ。いい感性をしている。澄んで引き締まった空気の感触が快い。
〇「俳句」 (株式会社KADOKAWA)
2022年2月号
令和俳壇 星野高士 選(「玉藻」主宰)
推薦 河瀬俊彦(爽樹代表)
酒盛りにはじまる漁夫の冬支度
選者評
漁夫と聞いただけで酒豪という感じが伝わってくる。海の上なのか、地上なのかはわからないが景気の良さの溢れている作品。妙味なのは冬支度という季語。酒盛りをしたらどことなく冬の支度も垣間見える。作者のものの見方も丁寧で、しっかりと詠んでいた。