爽樹インターネット句会
第61回 鑑賞・選評 8月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
東京五輪は開催直前まで問題が相次ぎました。最後の焦点は無観客開催と来日した大会関係者の水際対策でした。開催されるや各国選手は素晴らしい活躍を見せ、日本の選手団のメダルラッシュなど、当初の想定以上の成果をあげております。走り出したのですから無事に終了するのを祈るばかりです。
新型コロナウイルスは、感染の急拡大で政府は、既に発令中の東京都と合わせて、8月2日、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県で緊急事態宣言を発令しました。
地元の感染者推移も急拡大しており、デルタ株という変異株の感染力が異常に大きく、危機感を持っております。高齢者には、ワクチン接種が相当すすみましたが、現役世代接種はおくれており、50代以下の働き盛りの世代の感染が特に多くなっております。
医療体制が破綻寸前の状態で自宅療養の政府方針がだされ深刻な事態です。日常の感染防止策を徹底してこの危機を乗り切りましょう。
兼題 : 心太 夜の秋 当季雑詠
特選 3 句
今もつて押し器ありての心太
悠々 ( 1 )
心太は、煮た天草を型に流し固め冷やしたものを「押し器」(心太突き)で突き出して、酢醤油や黒蜜をかけて食べる、昔からある夏のたべものである。 一説に「ココロブ」と呼ばれ、「心太」とかかれ、奈良時代正倉院に記録があり、宮中の節季に用いられたという、 掲句の上五「今もって」は、「今以て」と書き、「今でも」の意味である。市販の「押し器」でなく、祖父母の使った「押し器」がいまでも健在なのである。
心太をするりと押し出す快感。 ( 夜来香 )
南国の花実の匂ひ夜の秋
泡沫 ( 2 )
熱帯、亜熱帯原産の花木、果樹は多彩である。沖縄や台湾、マレーシア、インドネシアなど南国の魅力の一つである。トロピカルフルーツとして色彩と甘い匂ひを持つものが多い。パイナップル、シークワサー、アボガド、マンゴー、パパイア、スターフルーツ、など数多い。私の経験では、沖縄や台湾は、四季の季節感がある。(一説に、春・夏・秋・春という)、日が暮れてから「夜の秋」の涼気のなかを散策すると屋台で各種のフルーツを売っている。
夜の秋を南国の花実と捉えたところが良いと思いいただきました。 ( 葫蘆 )
五輪来ぬテレビ桟敷の夜の秋
愚者 ( 1 )
呪われた東京五輪と言う人もいるが感染症蔓延の中でともかくも開催できた。観客不在である から自粛生活のなかで、専ら自宅で観戦している、上五で「五輪来ぬ」と言い切ったことで、これまでの紆余曲折をめぐる経過が表現されている。また中七の「テレビ桟敷」という家族団らんの表現、及び季語の取り合わせが適切である。
またも日本の金メダルに歓声をあげて。 ( 夜来香 )
秀逸選 7 句
終電車降りて家路を夜の秋
夜来香 ( 0 )
終電車で帰宅した経験は、仕事で遅くなった時、酔って眠り行き過ぎ終点まで行った時などなど、それぞれ経験している。 酔いもさめてとぼとぼ歩く心情が滲む一句である
籠り居のメダル談義やところてん
愚者 ( 3 )
オリンピックの話題は、コロナの自粛生活の中老若男女共通の話題である。中七の措辞 「メタル談義」がよい。
日本選手の大活躍に胸もすっきり。 ( 夜来香 )
1964年の東京オリンピックを思い出します。東京オリンピックを2度も経験出来るなんて••コロナ禍の開催となった今回のオリンピックは、直接応援できないけれど、精一杯応援します! ( 一歩 )
まさしく今の日本の光景が浮かび、いただきました。 ( 葫蘆 )
啜り終へもうひと泳ぎ心太
夜来香 ( 3 )
海の家で心太をすすりまた泳ぎにゆくのであろう。懐かしい家族の思い出の一句である。
昔の海水浴の思い出。 ( 一陽 )
プールで100m泳ぎ、立ち止まって鼻を啜りもう100mを決意しましたが。私は100mで限界となってしまいました。 ( 悠々 )
夜の秋古陶の村の登り窯
みのり ( 3 )
陶器は、戦国時代城主が贈り物に使う戦略物資で、陶器職人の村は逃亡を避けるため見張りをつけて囲われていた。今は、子孫がこの跡地を引継ぎ登り窯を備えた陶器の製造販売を行う拠点「古陶の村」となっており、その一つを佐賀県で訪れたが、まさにこの句の景であった。
登り窯の火が熱く猛り、一筋のけむりが夜空に上がる中にふと秋の気配を感じたのであろう。良い取り合わせだと思う。 ( 泡沫 )
秋めいて、日本のふるさと原風景が見えて来ます。 ( 一歩 )
天敵の先に逝きけり夜の秋
悠々 ( 2 )
良い意味の競争相手であり刎頸の友の突然の訃報である。「天敵」と表現したことで、掛け替えのない友を悼む気持ちが深い。
亡くなられたのは碁敵でしょうか?俳友でしょうか?幼馴染でしょうか?今年私は三人の旧友に逝かれました。 ( 一陽 )
碁敵でしょうか、憎くも、懐かしくも、長い間競い合った相手が逝ってしまった。寂しい夜をこれからどう過ごせば良いのか分からない•• ( 一歩 )
山伏の法螺尾根に聴く山開き
夜来香 ( 3 )
山伏の駆ける修験道は熊野古道である。熊野三山信仰が高まり、昔は上皇から庶民まで参詣者が多く「蟻の道」と言われた。熊野古道をあるくと山伏の修験者に追い越される
山頂に響く法螺の音が山開きを祝っているようだ。 ( 泡沫 )
酒旗上がる峠の茶屋の心太
山水 ( 1 )
茶屋を目指し峠を上がる。茶屋には酒屋の看板の旗がひらめくいている、一休みして取りあえず心太を注文する。 青空のもと見晴らしの良い峠の景である。
酒旗と言っても甘酒か。本格的に酒を出す店か。いずれにしろ心太に落ち着くのであろう。 ( 泡沫 )
選者のワンポイントアドバイス
8. 人魚かな岩に座りてところてん
「かな」は、詠嘆の終助詞とすると下五に持ってきた方がよい。語順を変更して、直喩とします。
参考例 ところてん岩に座りて人魚かな
句意が、岩に座り心太をたべる女性が人魚のように見えたということとして、暗喩とします。
参考例 ところてん岩にて啜り人魚めく
それぞれ特徴があります。
13. 庵へと山百合の匂ひ誘えり
リズム感が気になります。理由は中八のためです。句またがりになりますが中七にしてみます。誘ふ(いざなふ)は、 ハ行他動詞四段.{り}は完了の助動詞。 「り」音 を意識して。
参考例 山百合の香り庵へ誘へり
18.学びする煙うごかぬ蚊遣りかな
句意が、「学ぶ吾に」蚊遣りの煙が来ないことのようなので、表現を変えてみましょう。
俳句は、「我・今・ここ」が基本です。作句のときはこの原則を意識しましょう。
参考例 学ぶ吾になびかふとせぬ蚊遣香
互選句 10 句
魚津に遠く灯の下の夜の秋
一陽 ( 1 )
学びする煙うごかぬ蚊遣りかな
一陽 ( 2 )
学びと動かぬ煙に緊張感を感じました。何の学びでしょうか。 ( 悠々 )
にこにこと表裏なき子や心太
みのり ( 5 )
心太の素朴な味わい。 ( 夜来香 )
天真爛漫な子供と心太の混じりけなき透明なところが響きあっています。 ( 悠々 )
表裏なき子と心太の透明さが響き合っています。 ( 霧島 )
表裏なき子と心太の取り合わせが良くいただきました。子供の頃、よく駄菓子屋に心太を食べに行ったのを思い出しました。 ( 葫蘆 )
浜木綿のいよいよ白き夜更けかな
みのり ( 2 )
浜木綿の白さが浮だっています。 ( 霧島 )
白南風や海岸沿ひの停車駅
霧島 ( 2 )
アニメのプロローグのような爽やかな風をかんじました。 ( 一陽 )
清々しい海岸沿いの停車場が見えて来ます。なにを待つのでしょうか?どんなドラマが、始まるのでしょうか? ( 一歩 )
嘘ばれてちぎれちぎれのところてん
霧島 ( 6 )
心太は一気に食べないとまさにちぎれちぎれになってしまいます。おたおたしている様がおかしいです。 ( 一陽 )
嘘に嘘を重ねてシッチャカメッチャカとなってしまいました。諧謔味にあふれています。 ( 悠々 )
嘘がばれてしまい、箸で心太を食べるでもなくつつき千切ってしまった。余計に嘘がばれてしまうのに。小心者の心太である。 ( 泡沫 )
何と言い訳したら良いのか、謝ろうか、などと迷いながら心太をつついていたら、千切れ千切れになってしまった。 ( 一歩 )
きれぎれの心太と嘘のばれてしまった人の顔色の取合せがよいと思いました。 ( 山水 )
清澄な土に鳴くこゑ夜の秋
霧島 ( 1 )
夏とは言え既に虫の声が聞こえてきました。それを清澄と表現されました。 ( 悠々 )
地球儀をくるり回して夜の秋
一歩 ( 5 )
コロナ禍の地球に思いをはせているのか。 ( 夜来香 )
晩夏の夜の秋の気配はふとした時に感じるものであろう。地球儀を回して世界の旅を夢想しているときにも。 ( 泡沫 )
級友の声遠ざかる夜の秋
葫蘆 ( 1 )
現在では街があかるくていつまでも友の姿がみえています。昔はこんな光景もあったですね。 ( 一陽 )
炎天に描く五輪の絆かな
愚者 ( 1 )