爽樹インターネット句会
第54回  鑑賞・選評    2021年1月

爽樹俳句会 顧問 半田卓郎

あけましておめでとうございます。
コロナ禍の中の年明けとなりました。お互いが会合する事が難しい世の中、ネット句会、リモート句会での俳句活動を特に充実させたいと思います。爽樹は、創刊10周年を迎えました。祝賀会は中止しましたが、俳句コンクールなど各種行事は実行しました。次の10年に向けて新体制で取り組んで参ります。ご協力よろしくお願いします。くれぐれもご自愛の上、ご健吟下さい。

兼題 :   雪催、淑気、自由題

特選 3 句

黒壁の小江戸日暮れて雪催

夜来香 ( 0 )

川越の街並みは所謂江戸黒と言う漆喰の黒壁の家並が続く、雪催の夕暮れの街は雪がちらつくと、江戸情緒があり郷愁を誘う景である。

野火止の木立踏み分け朝若菜

山水 ( 0 )

野火止用水は、家康の江戸入城から50年経ち人口がふえ飲料水確保のために、松平伊豆守信綱が開設した、立川から平林寺をへて志木の新河岸川にいたる用水路である。七草粥の若菜摘みの季語の斡旋が新春にふさわしい。

雲間より昇る曙光や淑気満つ

写心 ( 0 )

雲間から空に向けて朝日が洩れる清々しい景である。正月らしい厳かな気持ちがする景を詠まれた佳句である。

秀逸選 7 句

ひとり来て浸かる露天湯雪催

三里 ( 0 )

独りで訪れた露天風呂に浸かり手足を伸ばしくつろいで居る。折から雪がちらついている至福の時であろう。

牛小屋の淡きランプや雪催

愚者 ( 0 )

牛小屋にほの明るいランプが点っている、外は冷え込み雪催である。

奥多摩の満水の湖淑気満つ

山水 ( 0 )

水をたたえた奥多摩の湖が、木立の間からみえる。改まった新年の気配のする景である。

白妙の巫女の衣擦れ淑気満つ

愚者 ( 0 )

白ずくめの巫女の動作で衣擦れの音がするのも、年初らしい気配である。

夭折の自画像冴ゆる回顧展

夜来香 ( 0 )

夭折の画家の自画像を展示している回顧展、その短い生涯を思い心を打つものがある。季語冴ゆると響きあう。

煤逃の茶房に捲る週刊誌

愚者 ( 0 )

年末の煤逃げの男が、喫茶店で暇つぶしに週刊誌を見て居る。諧謔味も在る一句。

武蔵野の稜線富士へ初御空

葫蘆 ( 0 )

武蔵野の稜線の遙か彼方に元日の富士山を望む。今年の関東の正月は好天でこの句のような美しい積雪の初富士を見る事が出来た。
選者のワンポイントアドバイス

「淑気満つ我慢だけでは明日は来ず」
爽樹の情景俳句は、見えない景と取り合わせる季語は見える季語とするのが原則ですから、淑気の代りに見える季語を組み合わせます。
例えば、 実千両我慢だけでは明日は来ず {爽樹の理念}6ページ参照
註:爽樹の理念の小冊子は、会員準会員、全員に各句会ごと配布中

「淑気の天・下の戸毎の夕餉あり」
句意が不明確です。見渡す家々では夕餉の支度をしている又は夕食を取っている景を詠んでいるようです。
例えば、 家々に夕餉の灯し雪催

「冬至待ち湯船に浮かぶ黄柚子たち」
冬至と柚子湯は、それぞれ冬の季語です。冬至に柚子湯にはいる習慣もあります。
季重なりを避けて一季語で詠むようにします。
例えば、柚子湯してなぞなぞ遊ぶ幼顔

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