爽樹インターネット句会
第53回 鑑賞・選評 2020年12月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
兼題 : 木枯、師走、自由題
特選 3 句
木枯や眠れぬ夜の子守唄
鈴音 ( 0 )
木枯は、秋か冬か古来議論があったが、室町時代,連歌師宗祇の時代から初冬と決まった。冬の初めに吹く強い北風である。掲句は、寝付きの悪い幼子に母親が子守歌を歌い聞かせている寒い夜、急な発熱など体調が悪く、父親は出張で不在なのかもしれない。色々想像させられる佳句である。
極月や吐息のごとく過ぐる刻
一歩 ( 0 )
師走は殊更歳月が過ぎるのが早く感じられるものであるが、今年はコロナ禍で未曾有の事態であった。心配やら失望で,溜息をつきながらの一年であった。来年はいつもの生活に戻りたい想いが滲む。
教科書の進度気になる師走かな
愚者 ( 0 )
コロナ禍での一斉休校が長かった。学校では学業の遅れを取り戻すために努力しているが、師走になり時間が限られていて気になるが、「かな」としたことで、年が開ければなんとかなると 楽観する。色々なことがあったが具体的に,絞って表現しているのがよい。
秀逸選 7 句
木枯や灯火寂しきアーケード
愚者 ( 0 )
木枯の季節、灯火さびしきと言う中七から閉店しているところが多い商店街の景が浮かぶ。
独り居て木枯の夜のココアの香
夜来香 ( 0 )
木枯の吹き荒れる寒い夜、暖かいココアに癒やされる。取り合わせに共感する。
テレワーク師走の街に人疎ら
夜来香 ( 0 )
コロナ禍で、テレワークをする会社が増えている。会社によっては大幅に事務所をへらしている。時事俳句である。
極月やLEDの日本橋
山水 ( 0 )
LEDは、発光ダイオードの略称で、一般的に使われている表現で広辞苑にも記載されている。師走界隈はイルミネーションで華やかであるが特にLEDの青い色が幻想的である。
風呂吹の甘き味噌だれ京育ち
夜来香 ( 0 )
昆布出し汁で煮た大根に肉味噌だれは、この季節の定番料理である。京料理に始まったことを思いだしている。
自転車の荷台に余る土大根
愚者 ( 0 )
畑から堀立の大根は重い。自転車の荷台にのせて運ぶ様子が見える一句である。
石蕗の花なべて長寿の喪中聞く
悠々 ( 0 )
師走には喪中の挨拶状が届く。最近の特徴は確かに九十歳から百歳越えまでご長寿の挨拶状が多いようである。季語の石蕗の花の、取り合わせがよい。
選者のワンポイントアドバイス
見える俳句とすること 爽樹の情景俳句
季語の「師走」は、十二月のことですから具体的な景が見えません。爽樹の情景俳句は、見えない季語と取り合わせる景は、見える景とすることを原則としております。
(詳細は、爽樹初心者テキスト参照)
原句 「迫りくる師走を前に気忙しき」
添削例 迫りくる師走を前に映画見る
原句 「季節感失せて巡りし師走かな」
添削例 駅前の足湯巡りし師走かな