爽樹インターネット句会
第52回 鑑賞・選評 2020年11月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
兼題 : 冬近し、とろろ汁、自由題
特選 3 句
綻びのままに枯れゆく冬薔薇
みのり ( 0 )
冬薔薇は、冬枯れの中健気に鮮やかで美しい。「綻びのままに枯れゆく」の措辞に詩情があり冬枯れの薔薇を巧みに表現している。
里訛ゆき交ふ夕餉とろろ汁
一歩 ( 0 )
同郷の人達と楽しい夕食の景である。地元産のとろろ汁に話が弾む楽しい会食であろう。
対岸の灯のはや点る冬隣
夜来香 ( 0 )
立冬を目前にし寒く厳しい季節がすぐそこまで来ておいる。夕暮れも早くなり、対岸の灯火の点るのも早い。対岸の灯が次々に点るなど冬隣の景は余情がある。
秀逸選 5 句
冬近し魚版をたたく若き僧
みのり ( 0 )
原句は、魚版であったが、魚板または魚鼓(ぎょく)の間違いであろう。修正して戴いた。内部を刳った木製の魚形で、寺で作務の時刻に打ち鳴らすものである。魚板の音が早朝の境内に聞こえ、修行僧の活動が始まるのである。
蕉翁の跡追ふ旅のとろろ汁
夜来香 ( 0 )
芭蕉は各地を旅して多くの名句と紀行文を遺した。特に奥の細道・みちのくの旅で新境地を拓いた。芭蕉縁の地のとろろ汁は、特に味合い深いものがある。
余生こそ真の人生とろろめし
愚者 ( 0 )
余生を自分らしく生きることこそ真の人生という措辞に共感する。季語のとろろ飯が野趣があり良い。
大原女の通ひし小径薄紅葉
一歩 ( 0 )
大原女は、大原の里から黒木や木工品などを頭にのせて京都に町に売りに来る女である。大原女の行き交う、薄紅葉の季節の京都は風情がある。
紀州より潮の香連れて干柿来
愚者 ( 0 )