爽樹インターネット句会
第50回  鑑賞・選評    2020年9月

爽樹俳句会 顧問 半田卓郎

兼題 :   唐辛子、竹伐る、当季雑詠

特選 3 句

闇夜には魔女のマニキュア唐辛子

一歩 ( 0 )

季語の唐辛子は、傍題が十ヶもあり、種類、大きさ、形状など変化に富んでおり、これまでに詠まれた俳句も多岐にわたる。取り合わせる物を選ぶことで特徴ある句が詠める。掲句は、ヨーロッパの民間伝承に現れる妖女の魔女のマニキュアを想定した。おどろおどろしい唐辛子である。

竹を伐る寺に先師の句碑を訪ふ

夜来香 ( 0 )

飯能の武蔵野観音札所通称竹寺に、先師小澤克己の句碑がある。平成二十二年四月 師は、完成を待たずに亡くなった。竹寺は、俳句寺とも呼ばれ著名俳人の句碑が多い。先師の句碑は、竹林入り口にあリ、次の句である。「竹伐るや昨日と明日の真ん中で」 克己 本年四月爽樹十周年記念竹寺吟行俳句大会は、コロナ禍で残念ながら中止となった。

梨作り今年最後と故郷(クニ)の母

一陽 ( 0 )

梨は、秋の季語である。故郷の母から毎年梨がおくられており今年も届いた。高齢の母から、梨を育てるのも今年で最後だと手紙が添えられてある。句の表現は率直であるが、母に対す思い及び故郷への思いが深い作品である。 下五は「母の文」でも良い。

秀逸選 7 句

唐辛子我が菜園のあでやかに

葫蘆 ( 0 )

真っ赤に熟した唐辛子は、眩いばかりである。菜園を艶やかに飾るのである。

唐辛子一口含み我慢の子

夜来香 ( 0 )

子供は好奇心にかられ、赤い唐辛子を口にしてあまりの辛さに泣きそうに顔をゆがめて我慢しているのであろう。

ふる里が遠くなりたる盆休み

写心 ( 0 )

時事俳句としても評価される句である。感染症蔓延で、都心から地方都市に行くのは憚れる世の中となってしまった。盆休み例年には帰省していたのであるが今年は、控えた人も多いのである。

竹伐れば嵯峨野は風の行きところ

一歩 ( 0 )

嵯峨野は、京都の右京区の地名で歌枕によまれる、竹林と、去来の別荘落柿舎には芭蕉が滞在して嵯峨日記を執筆した。俳人には縁の地名である。 竹林の嵯峨野の風の道は、特別の風情がある。

懐かしき画友戻りぬ竹の春

写心 ( 0 )

秋の竹林に画友が久しぶりに戻り旧交を温めた。懐かしさと喜びの溢れる一句である。

社会的距離は不問と花野ゆく

山水 ( 0 )

秋の草花の咲き乱れる花野を自由に散策する喜びが溢れている。コロナ禍の現在、感染防止に、ソーシャルディスタンスが、不文律であるがせめて広々として誰も居ない花野には、マスクをしないで歩き回る自由が欲しい。

竹伐るや何処におはすかぐや姫

山水 ( 0 )

竹林というと、伝説のかぐや姫を思い出す詩心である。当然「かぐや姫」の類想句はあるが、この句の「何処におはす」という期待感の表現に惹かれた。

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