爽樹インターネット句会
第49回 鑑賞・選評 2020年8月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
兼題 : 烏瓜の花、氷水、当季雑詠
特選 3 句
烏瓜咲いて闇夜にレース編む
夜来香 ( 0 )
烏瓜の白い花は五裂しその先が糸状にさけてレース糸を広げたように見える特異な形状である。雌雄異株であることと、夕方開花し朝萎むのは、夜間飛来する蛾の受粉に備えての習性であるという。 季語は「烏瓜の花」であるが、「烏瓜咲く」という表現でもかまわない。但し「烏瓜」だけでは、実を示す秋の季語となる。掲句の「闇夜にレース編む」という表現は、格調高い。
友送りて喪服のままにかき氷
一陽 ( 0 )
かき氷、氷水の季語の俳句は、類想が多い、如何に新しみのある俳句を詠むかである。掲句は、友人の葬儀の帰路という場面である。夏の葬儀は礼服が暑い、葬儀の帰路友人同士誘い合いかき氷で一服して故人を偲んでいるのであろう。
潮の香の残る貝殻夜の秋
三里 ( 0 )
晩夏になると昼間は未だ暑くても、夜は既に秋の気配が漂う。季節感に敏感な俳句らしい季語である。かって海辺でえた貝殻には僅かに潮の香りがする。潮の香りは夏の日の思い出に繋がる。多くを語らず余韻がある一句である。
秀逸選 7 句
妖怪の住処か烏瓜の花
愚者 ( 0 )
白い長い糸状の花がいかにも妖怪のようなイメージをもたれた。発想がよく、五七五の定型準拠している。
烏瓜咲いて闇夜を深めをり
三里 ( 0 )
烏瓜の花の持つ雰囲気は、闇夜の闇を更に深めるユニークなものであることを表現している。
イチゴ良しメロンまた良しかき氷
写心 ( 0 )
季語のイチゴヤメロンでなく、赤色と黄色の定番のかき氷であろう。かき氷の特徴をよく表現している。
夕焼や琵琶湖に浮かぶ大鳥居
山水 ( 0 )
滋賀県白鬚神社は磐座が在り大鳥居が著名である。 琵琶湖の中の夕焼の大鳥居は美しい。
藍染の日本てぬぐい夏遍路
一歩 ( 0 )
夏の遍路は、暑さの中大変であろう。手拭いに焦点を当てたのが良い。
釣堀の釣果競はぬ夫婦連れ
夜来香 ( 0 )
釣堀でゆったりとした時間を過ごすご夫婦を詠まれているのが良い。
灯(ホ)のゆれてまはり燈籠止まりけり
一陽 ( 0 )
廻り灯籠に映る情景それぞれ想い出がある。燈籠が止まったことに惹かれるものがある。
選者のワンポイントアドバイス
「一湾に立ち枯れる樹々夏の月」
枯れるは、動詞「枯る」下二段活用なので連体形「枯るる」となります。辞書で文法を確認しましょう。
「さくさくと崩すが楽しかき氷」
偶々と思いますが下記の類想・先行句があります。私も経験がありますが、俳句は僅か十七音ですから偶々類想となりやすいものです。そう言う場合はすぐ取り下げます。
山くづしゆく楽しさの氷水 鷺くら(角川大歳時記)