爽樹インターネット句会
第47回 鑑賞・選評 2020年6月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
兼題 : 草笛、枇杷、当季雑詠
特選 3 句
草笛や無沙汰を侘ぶる滋賀の墓
悠々 ( 0 )
琵琶湖を望む墓所、久しく墓参をしていない作者の気持ちが現れている。季語の草笛から父祖の地を駈けた子供の頃の想いでも滲む。基本一型の代表的な作句法であるのが良い。
ひとり居にともしび色の枇杷二つ
一歩 ( 0 )
一人住まいの座卓に黄橙色の枇杷が二つ置かれている景である。中七の措辞「ともしび色」の表現により、作者は、心にともしびとなるような暖かい気持ちとなったのであろう。二つという措辞も色々想像させるものがあるのが良い。
伸びやかな船頭の唄菖蒲池
愚者 ( 0 )
例年5月末から6月は、各地の菖蒲祭の季節である。船頭の歌声を聞きながら菖蒲の咲く池を船で回る菖蒲祭が行われる。霞ヶ浦に近い佐原も小江戸というが、あやめ祭が著名で、小舟に乗った嫁取りの行事の記憶がある。通常多くの人が訪れるが今年は寂しいことであろう。上五の措辞「のびやか」が、祭りの雰囲気をよく表しており適切である。俳句において、上五の意味合いに関して、「上五の飾り言葉」という表現がある。重すぎず、軽く、趣きのある言葉が大切である。この句は正にその模範となる使い方であろう。
秀逸選 7 句
何無くも知足の里や枇杷灯り
写心 ( 0 )
現状を満ち足りたものとし不満を持たないことを「知足」と言い、老子の言葉である。上五の措辞「何無くも」から、不自由な、中でも現状で充実した気持ちで暮らしている里のたたずまいである、取り合わせの季語の枇杷の黄橙色が幸せな気持ちを暗示していて良い。
草笛に鳥鳴き返す山城趾
葫蘆 ( 0 )
自然の中での草笛が、山河にとけ込み鳥が鳴き返すように聞こえたという、山城跡地というのが物語があり良い。
枇杷熟れて妣の享年超えにけり
悠々 ( 0 )
今年も枇杷が熟れる季節になった。早いもので、作者は亡き母の年齢をこえたことに思いを新たにした。
すこしづつ見ゆる真実枇杷を剥く
パセリ ( 0 )
何か懸案事項の真実が次第に明らかになってきたということである。熟れた枇杷を剝くことで、何かが見えてくるのか、剝き乍らその謎の話をしているとも読める。
草笛やトトロ呼び出す心地して
三里 ( 0 )
宮崎監督のアニメに出てく「ととろ」を、草笛が呼び出す心地がするという、トトロの地元ならではの一句である。秋津駅近く、淵の森は、宮崎監督の住まいに近く、氏がトトロの構想を練られた所と聞く。我々の吟行地の定番であった。
草笛や妖精達の夢語り
山水 ( 0 )
草笛にあわせて、妖精が夢語りをしているという7,想像力の美しい作品である。
草笛や新幹線の見える土手
一歩 ( 0 )