爽樹インターネット句会
第46回  鑑賞・選評    2020年5月

爽樹俳句会 顧問 半田卓郎

3月から、感染症の深刻化とともに、通常の句会も通信句会として運営している、通常の句会では、パソコンでのメール交換など十分出来ない人が、居るのでファックスを使用するが、枚数が多いと家庭用のファックスの調子がわるいようで、結局郵便でのやりとりが多くなる。通信句会は意外に手間取っている。当句会は、従来からメール添付でのやりとりだけであるからその点は問題はない。 但しこの原稿をホームページに、載せる方法として、PDFで、行うと幾分幹事の手間が少なくなるので、テスト的な検討を杉浦幹事にお願いしている。

兼題 :   林檎の花、蜆汁、当季雑詠

特選 3 句

語り尽き飲み尽き啜る蜆汁

夜来香 ( 0 )

酒を飲みながら楽しく仲間と語り合う様子が、語り尽き飲み尽きと言うリフレインで生き生きと描写されている。最後の仕上げが、蜆汁を啜るということである。俳句は動詞はなるべく使わない方がよいのが基本であるが、この句は、そのタブーに挑戦している。この句は、例外的に成功しているのは、句の内容とともに、リズム感がよい為である。

花林檎背にして郷を出にけり

写心 ( 0 )

林檎の産地は、概して北国―東北、北海道、信越などであるが、春に一斉に白い花を付け、人手で授粉をする。林檎の花は、北国に春を告げる風物詩である。春に郷里を離れ、希望を抱き都会へ出た当時の作者の高揚した気持ちが、中七下五の措辞に込められている。詠嘆の助動詞{けり}が、効いている。

振り向けばわが魂の色春の虹

三里 ( 0 )

春の虹は淡くすぐ消える。振り向けばと言う措辞は、虹を振り向くと言う意味のほかに、自分の人生を振り返っている。来し方は、虹のように多彩であるが、儚い。

秀逸選 7 句

ふるさとの紺屋の卯建花林檎

愚者 ( 0 )

紺屋は、染め物屋である。卯建のある立派な家屋で林檎畑に、隣接しているのであろう。懐かしい街並みと思い出の景なのである。

若き日の恋や林檎の花の下

葫蘆 ( 0 )

林檎園の娘が昔同級生であり、淡い恋心を抱いていたということであろうか。今では懐かしくすべて朧の中である。

蓑虫のごとき蟄居や暮の春

写心 ( 0 )

コロナウイルス感染症の特別警戒緊急事態宣言により、ステイホームに終始している。正に「蟄居・謹慎」の状態である。作者は比喩として、「蓑虫」のように動きがとれないとしている。ウイルス感染は、2波、3波が、あるのが歴史で証明されており、その上今回のウイルスは、従来になく進化しているので相当長引きそうであリ覚悟が必要である。

おしらさまに一枝添えし花林檎

一歩 ( 0 )

おしら様は、東北地方の民間信仰の養蚕の神様である。春先の野原のおしら様に、林檎の花を供えて手をあわせた。災害のないことを祈ったのであろう。(添えしは、添へしとする)

瀬田川の流れゆるやか蜆汁

三里 ( 0 )

瀬田川は、琵琶湖から流れいずれは、淀川となる。桜の季節も終わり春たけなわの京阪の景は美しい。俳句は地名を使うと大体良くないがこの句は、地名によるイメージがきいている。

甲斐奔る水の量感桃の花

パセリ ( 0 )

甲斐は、山梨県中西部釜無川東岸信玄堤の遺構がある地域である。滔々と流れる川と、周囲の桃畑は、この時期大変美しい。桃の花に囲まれ桃源郷のような景である。「水の量感」が、稍硬い表現である。例えば中七を「水滔々と」とする。

雲ながめ日々不急なり蜆汁

パセリ ( 0 )

現在の置かれている状況は、不急そのものである、率直に詠まれているのが良い。但し、命を賭けて日夜努めている医療関係者がいることは忘れてはならない。ひたすら滋養のある蜆汁を飲み英気を養うことだ。
選者のワンポイントアドバイス

「紅淡く初恋の花林檎咲く」
鳥が飛ぶ、花が咲く、の、「飛ぶ」「咲く」 ということは言わずもがなである。 
例えば、  初恋やくれなゐほのと花林檎
例えば、  初恋や薄くれなゐの花林檎

「花りんご野沢菜いりのおやき食む」
野沢菜は、冬の季語で季重なり。季重なりはさける。又材料が多すぎるので絞る方がよい。    
例えば、  花林檎おやき抱へて集ひけり

互選句 0 句