爽樹インターネット句会
第45回  鑑賞・選評    2020年4月

爽樹俳句会 顧問 半田卓郎

新型コロナウイルス感染は、拡大しており不安な日々を過ごしております。結社内の句会も殆ど感染を避けるため、通信句会に切り替えております。又外部の俳句大会も今春計画されたものは、軒並み中止となりました。お互い健康に注意してこの難局を乗り切りましょう。在宅のテレワークをする会社、学校通信講座では、スカイプを活用し双方向会話で行っているようです。IN句会もスカイプの活用は、検討課題です。

兼題 :   春の波、風光る、当季雑詠

特選 4 句

春の波土手に黄花の揺れてをり

鈴音 ( 0 )

兼題の「春の波」は、明るい風光の穏やかな波と春濤の大荒れな海の二つのイメージがあります。この句は、前者の穏やかな海と海岸の黄花の美しい色彩のとりあわせで、景が見えて春の抒情のある句です。

ひさびさの校庭の子ら風光る

愚者 ( 0 )

感染症防止の休校がつづく最近の世相を思いますが、通常ですと春休み明け登校した生徒と言うことになります。「ひさびさの」と言う上五が、色々な事を物語っております。上五の飾り言葉といいますが、この句では、大変良い使い方です。「風光る」は、生き生きと子供たちが動き回る様子と響き合う季語です。

春の波拾ひし貝は母の魂

写心 ( 0 )

穏やかな春の海辺、偶々拾った美しい貝、桜貝かもしれません。母を思い出されのでしょう。「母の魂」とされて想いが深いことを詠まれております。

道化師の野外ステージ風光る

一歩 ( 0 )

春になと、公園で道化師のステージが行われる。江戸時代から伝わる色々な出し物、猿芝居などに 人の輪が出来る。風光るという季語に相応しい景です。

秀逸選 6 句

ダイバーの口滑らかに春の波

悠々 ( 0 )

上がって来たばかりのダイバーから海底の様子を聞いているのであろう。美しい海底の景を、生き生きと話しているダイバーを中七の措辞で表現している。

真砂地へ君の名記し春の波

一歩 ( 0 )

波に流されてしまう砂地に、名前を記すと言うことは、それだけ思いが深いのであろう。穏やかな春の景に癒やされているのである。

風光る野に寝転べば風に酔ふ

葫蘆 ( 0 )

風光ると言う季語は、柔らかな風が吹き、まばゆい日の光の屋外の景である。掲句は、陽光のもと春風に揺らぐ野原に寝転ぶ心地よさを率直に詠まれて居る。風光るという季語を用いた他の句において、屋内の景を詠んだ句又は陽光の表現がダブる使い方の句は、注意した方が良い。

学舎に時は止まりて風光る

鈴音 ( 0 )

中七の措辞から、最近の学校閉鎖を想像できるが、他に過疎化で廃校となったものも想定できる。俳句は、一旦作品になると作者をはなれ、読み手に任せられるものである。中七の措辞が多くを語っている。

風光る底引き網に妻の靴

写心 ( 0 )

東日本大震災の津波で流された行方不明者が、未だにかなりの数である。最近九年目に底引き網に妻の顎の骨が見つかったという報道があった。掲句の下五の、妻の靴は、震災直後のことかと思われるが、いたましいことである。

酒買うて月と帰れり春薄暮

葫蘆 ( 0 )

酒を買って帰ってきた夕方、空には月が出ていたと言う風情のある句意である。中七の表現が良い。なお原句は、春薄暮となっていたが歳時記にある季語「春の宵」として頂いた。

互選句 0 句