爽樹インターネット句会
第41回  鑑賞・選評    2019年12月

爽樹俳句会 顧問 半田卓郎

兼題 :   水鳥、冬麗、当季雑詠

特選 3 句

水鳥や水位戻りし街の川

葫蘆 ( 0 )

今年の秋は台風により、日本各地で風水害により甚大な被害があり決壊した堤防、ブルーシートで覆われた家屋も多く、今なお困窮しておられる方には心からお見舞い申し上げる。 掲句は、水害の水が引き水位が元にもどり水鳥も来て以前の景色にもどったこの街の川ではあるが、 住宅や畑やその他の被害は、これから厳しい冬を迎えて余りにも大きいのである。淡々と「水位戻りし」の措辞の言外に読み取れる苛酷な現実がある。

冬麗の天に雲ひく銀の翼

写心 ( 0 )

冬青空を行く飛行機を詠んでいる爽快感のある句である。銀の翼という表現と天に雲ひくという表現に工夫の跡がみられる。入間の飛行場から飛んだ飛行ルートのある所沢に良く見られる景であるが、飛行機の飛来する所ではどこでも見られる景である。

星々の帰り忘れか露凍る

パセリ ( 0 )

露は、朝日に消えるが、冬には晴れた寒夜の放射冷却により凝結したまま草木についている状態を「露こおる」「露凝る(こる)」という季語で表現したのも良い。夜空の星が地上に残ったのではという見立ての発想はよい。 遠嶺の小澤克己主宰は、殊更宇宙への関心がたかかった。師系として爽樹も、宇宙の視点を持った俳句を詠むことに関心をもつことにしたい。

秀逸選 6 句

明星の去りて水鳥現るる

愚者 ( 0 )

夜明け方、東の空に輝く金星が見えなくなったころ水鳥が泳ぎだしてきた。明星に交代して、明るくなった水辺に水鳥が表れ、今日の一日が始まるのである。

ふる里や手に触れさうな冬銀河

写心 ( 0 )

都会では、銀河を見る事ができないが、故郷では大空に満天の星が見られ、中でも天の川は手に触れそうに見えるのである。

綾取りに寄り添ふ子らや冬うらら

愚者 ( 0 )

綾取りを幼子にやって見せているのであろう。小春日和の縁側での祖母とお孫さんの穏やかなひとときのようである。中七の措辞がよい。

山野辺の語りべの沼破蓮(やれはちす)

一歩 ( 0 )

山野辺と語り部の「べ」がリフレインとなっているなどリズムがよい。俳句はリズムが大事である。語部の話の中には、沼に関係した昔話もあるのかもしれない。

冬うらら我がもの顔の他家の猫

悠々 ( 0 )

猫は、楽々と越境侵犯をする。昔我が家へ隣家の猫が来て必ず放尿することがあって不快だった。他家の猫が我が物顔で来る様子を述べていて諧謔実がある。

我もまた風のまにまに浮寝鳥

写心 ( 0 )

時の流れに身を任せという歌があったが、浮寝鳥の有り様に自分を重ねて詠まれた。達観した生き方なのであろう。
選者のワンポイントアドバイス

「冬うらら山の湯宿や囲炉裏端」
「や」は、強い切れ字です。三段切れは避けた方がよいでしょう。
「冬うらら山の湯宿のいろり端」

「冬霞の関東平野峠より」
下五が、散文のようなので語順を変えてみます。
「峠より関東平野冬霞」

「電車待つ背中に西日冬うらら」
西日は、夏の季語です。季語としての季感も夏ですから季重なりなので、日差しぐらいの表現がよいでしょう。
「電車待つ背中に日差し冬うらら」

互選句 0 句