爽樹インターネット句会
第39回  鑑賞・選評    2019年10月

爽樹俳句会 顧問 半田卓郎

兼題 :   宵闇、刈田、当季雑詠

特選 4 句

宵闇の饐えし匂の裏通り

愚者 ( 0 )

名月の後、日ごとに月の出が遅くなる。宵のうちに月の出ない暗闇が宵闇である。掲句はまさにこの宵闇の時間帯に、裏通りに食べ物が腐ったような臭いがしたという。色々想像させる不気味な雰囲気のある句である。

ライフライン途絶へし街や秋暑し

写心 ( 0 )

時事俳句である。台風による豪雨と強風による被害が各地で発生した。特に千葉県において停電が長期化して被害が大きかった。残暑厳しい時期で住民の苦痛は計り知れない状況であった。「ライフライン途絶え」と言う措辞から過酷な状況を思いやる。今後多発する災害に対して国の政治の適切な対応が待たれる。

田の神の唄声らしき刈田風

パセリ ( 0 )

稔りの秋を迎えて、田の神の上機嫌な歌声のように風音がするのであろう。田の神のうたごえとしたところがユニークであり良い。

母の忌の白檀薫る秋扇

夜来香 ( 0 )

白檀は独特の芳香がある。秋扇の白檀の芳香から、忌日をむかえて母を思いだし、偲ぶ様子を詠まれている佳句である。

秀逸選 7 句

宵闇のアッシジにガス灯ほのと燃ゆ

深山苧環 ( 0 )

アッシジは、イタリー中部にあるキリスト教の巡礼地である。城壁に囲まれた石造りの美しい聖地であり、聖フランチェスコの出身地として知られている世界遺産である。「ガス灯ほのと燃ゆ」という措辞に宵闇の美しい景が浮かんでくる。

宵闇や酌めば同郷立飲み屋

葫蘆 ( 0 )

仕事帰りの一杯飲み屋での、呑み語り合うことを詠んで居るが、話をしている内に同郷であることが分かり一際話が弾む。特に昔は酒屋の店先での手軽な立ち飲み場があったのが懐かしい。

子と犬と苅田に遊ぶ夕間暮れ

夜来香 ( 0 )

夕べの刈田を駆けて遊ぶ子供と犬の様子は、郷愁を呼ぶ景である。

この畦は風の通ひ路曼珠沙華

一歩 ( 0 )

曼珠沙華は、畦に沿い赤い花を咲かせている。突然現われて消える。風の通い路という措辞がよい。

順繰りに刈田となりぬ棚田かな

悠々 ( 0 )

棚田の刈り取りは、上からか下からか順繰りにやるのであろう。刈り取りの動きが見えるのがよい。

校門の錠を降ろせば虫の闇

愚者 ( 0 )

校門の錠を降ろすと、外部と隔絶されて、虫の声の中に身を置くことになる。一時の虫の声を楽しんでいる。

冬瓜の昭和の匂ふとろみ汁

悠々 ( 0 )

冬瓜をとろみ汁でを食べた思い出は幼い頃の思い出なのであろう。幼い頃の思い出はまさしく昭和の風景である。

互選句 0 句