爽樹インターネット句会
第38回 鑑賞・選評 2019年9月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
8月23日から始まり9月7日までが、24節気の「処暑」です。「暑」が「止(処)る」と言う意味があります。 たしかに、酷暑の毎日でしたが、朝晩は少し冷え込むようになってきました。虫やとんぼや黄金色の稲穂に秋の田園風景が現われてまいります。しかしまだまだ昼間は暑さが続きます。色々工夫をして残暑を乗り切りましょう。当月の席題「秋の朝」「葡萄」に関して、「一物仕立て」や「取り合わせ」でバラェテイのある佳句を提出して戴きました。
兼題 : 葡萄、秋の朝、当季雑詠
特選 3 句
企みはすでに明らか黒葡萄
パセリ ( 0 )
黒葡萄の持つ雰囲気と企みの心象を取り合わせている佳句である。黒葡萄の外観には、巧妙な計画の企みでも察知されるような雰囲気がある。
澄み渡る古都の鐘の音秋の朝
夜来香 ( 0 )
暑い日の続くなかで迎えた爽やかな朝、特に歴史のある古都の街並みの中、聞こえる鐘の音に、秋の朝の感慨が滲む佳句である。
丹精の朝顔撮りて汽車を待つ
夜来香 ( 0 )
ローカル線の駅の光景である。駅長の丹誠の朝顔を巡り駅員とはなしをし、写真を取ったりしている和やかな景が見えてくる。
秀逸選 7 句
秋の朝きりりと結ぶ靴のひも
深山苧環 ( 0 )
中七の「きりりと結ぶ」の措辞で、作者の心意気が現われており、秋の朝のこの日の外出は作者の特別の用事なのかも知れない。
葡萄狩る手のひと房の重さかな
葫蘆 ( 0 )
観光葡萄園での一齣であろうか、葡萄の「みずみずしさ、や量感」が、つたわってくる。原句は、「葡萄狩り」と切れていたので、「葡萄狩るテ」と連体形で繋げることとして戴いた。「かな」で終る基本三型は途中で切らないのが原則である。
兄よりの葡萄の絶えて久しけり
深山苧環 ( 0 )
兄上から、長年秋には葡萄が送られてきたのであろう。最近送られてこないのがこの時期になると、殊更思い出す。 兄の手作りなのかその地の名産なのか、いずれにしても、兄上を思いだすのである。下五の「久しけり」という措辞に万感の思いがこめられている。
木漏れ日も諸手に受くる葡萄狩
愚者 ( 0 )
葡萄狩の景をよんでいる。葡萄園は、日差しが遮られており掲句のように木漏れ日に包まれている。葡萄をもろ手に受けるわけであるが、日差しももろ手にうけるとしたところがよい。
遠き嶺の諸手広ぐる秋の朝
パセリ ( 0 )
連山が遠くに取り囲むように見える景は多い。埼玉西地区では秩父連山が正にこの句ように、四方の秩父の山々がみえる。秋の澄んだ空気のなかで、くっきりと見えて季語と響き合う景である。
ひたひたと影ふゆるなり踊の輪
パセリ ( 0 )
上五の ひたひたという措辞は、水が寄せてくるように静かに迫る様子を示す擬音であるが 盆踊りが佳境に入る頃、踊り手が急に増えてくることがある。 その頃踊りは最も盛り上がるのである。中七の「影ふゆるなり」の措辞で盆踊りが、佳境に入ったことが伺える佳句である。
一口の白湯の甘さや秋の朝
一歩 ( 0 )