爽樹インターネット句会
第37回 鑑賞・選評 2019年8月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
例年になく長梅雨でしたが梅雨明けとともに日本列島は酷暑となり、熱中症の救急搬送が例年になく多いと報じられております。暦の上では8月8日が立秋ですが、まだまだ暑い日が続きます。暑さの中で涼しさを感じ季節の移り変わりを詠むのが俳人です。例えば季語の「夜の秋」がその端的な例です。今月の席題は、「蟻」と「夏休」 動物の季語と生活の季語でした。「蟻」は、身近な動物なので日常生活から発想を巡らして多彩な句が提出されました。「夏休」は、子供の頃、小学生の頃の思い出から発想された句が多く提出されました。
兼題 : 蟻、夏休、当季雑詠
特選 3 句
理科室はお化け屋敷よ夏休み
愚者 ( 0 )
夏休みの学校に行く機会があったのであろう。人気のない理科室には、色々なものがある。例えば、人体の解剖模型、動物の剥製、その他お化け屋敷の様な不思議なもの、気味の悪い物がおおい。これを「お化け屋敷」と称した。終助詞の「よ」は、自分の判断をしめし相手の同意をもとめる表現であり、この句の場合適切な使い方である。季語の夏休みと理科室の取り合わせは、適切である。
うたた寝の脛這ふ蟻やカフェテラス
葫蘆 ( 0 )
蟻は身近な昆虫である。緑蔭のカフェテラスでくつろぐうたた寝の一時、脛を這う蟻にふと目覚めたのであろう。くつろぎの一時が描写されている。
回廊に風渡る午後蝉しぐれ
一歩 ( 0 )
風が吹き抜ける回廊という措辞から、古刹の本堂と仏間の間の回廊、更に庭園の景が浮かぶ。真夏の庭には蝉が今生の命限りとうるさいほど鳴いている。中七の措辞がよい。
秀逸選 6 句
夏休み四つ葉探しに日が暮れて
真珠 ( 0 )
四つ葉は、幸せを呼ぶという。探すと見つからないが無心でいるとかえって見つかりやすいとも言われる。夏休みの一時の穏やかな時間が眼前にある。
五右衛門の楼門抜くる蟻の道
山水 ( 0 )
五右衛門謂われの寺院を以前訪れたことがある。かの有名な盗人と偶々見かけた楼門を自由に這い回る蟻に着眼しているのが面白い。
迷ひ蟻避けて塵掃く箒かな
深山苧環 ( 0 )
箒を使う時に、逃げ惑う蟻に着目している。 蟻をはき出さない様に箒を使う様子を詠まれたのが良い。
悶へをる獲物苦も無く運ぶ蟻
真珠 ( 0 )
働き蟻が、未だ生きているえものを大勢で抱えて、手際よく運ぶ様子を巧みに表現している。上五中七の「悶へをる・・苦も無く」の措辞が獲物の様子、運ぶ蟻の手慣れた行動を良く写生している。
ブナ林に透く渓流や夏休
山水 ( 0 )
ブナの原生林を訪れた夏休みの思い出の句である。渓流の傍のブナ林の景に感動した夏休の体験を描写している。中七の措辞がよい。
ハッとして降ろせぬかかと蟻の列
鈴音 ( 0 )