爽樹インターネット句会
第36回 鑑賞・選評 2019年7月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
年号が新しくなり、早い物で今年も6ヶ月経過しました。6月の晦日の名越の祓も過ぎました。5月末の爽樹代議員会で役員体制、新年度の計画など策定され新たなスタートとなりました。ホームページ上での句会と言う新しい形での当句会に熱心に毎月参加して頂き、軌道にのってまいりました。継続は力なりといいます。 今後ともよろしくお願い申し上げます。
兼題 : 鮎、山滴る、当季雑詠
特選 4 句
肩までのズボンが映ゆる鮎の川
悠々 ( 0 )
兼題の鮎に関して色々句が提出された。それぞれの句が鮎の色々な局面に着目し工夫されている。その中で、既視感、類想がすくなく、景が見えて情が滲む、「情景俳句としての新しさと個性」の見地からこの句を選出した。川のなかで鮎釣りをする姿が、明確に表現されている。中七の措辞から川の流れの中の作者の晴れがましい表情と気持ちも伺えるのがよい。
山滴る熊野に古き朱の社
夜来香 ( 0 )
山滴るという季語は、夏山の有り様を表現する。熊野の社ということでの存在感が圧倒的である。万緑の中の朱の社は、神々しい。季語と地名のとりあわせで成功した。
未だはもう捥ぎ時逸す胡瓜かな
悠々 ( 0 )
野菜の成長は、想像以上に早く、翌日には大きくなりすぎということは多くの人が経験している。胡瓜のことでもあり、タイミングを逸することでの世の中の事柄の比喩でもある。諧謔味もあるのが良い。
軽鳧の子(かるのこ)の冒険といふお引つ越し
パセリ ( 0 )
鳧の子が、親鳥のあと追い道路を横断する景は、いかにも危なっかしく、周知である。この句は、中七の表現「冒険という」により、あくまでも可愛らしいが含蓄のある句となった。
秀逸選 6 句
振り塩の手も鮮やかに鮎を焼く
夜来香 ( 0 )
鮎の俳句で、振り塩の手の動きに着目しているのは、ユニークである。いかにもうまそうな匂いのしてくる一句である。
ほろにがき鮎の腸一人酒
愚者 ( 0 )
「通」は、腸まで食べる、しかも一人酒ということで、味のある一句である。
静かさや山滴るは鎌倉路
鈴音 ( 0 )
鎌倉の夏の景が、季語「山滴る」で際立つ一句である。
この町は第二の故郷山滴る
葫蘆 ( 0 )
長く住んだこの町は、もはや「第二の故郷」なのである。見慣れた夏山もそう言う心でみると懐かしさがある。
湖臨む漆黒の山滴れり
悠々 ( 0 )
夏山を漆黒の山と表現しているのが良い。夏山の囲む湖の景、特に季語が生きている。
若き日の下宿の談義明易し
夜来香 ( 0 )