爽樹インターネット句会
第35回 鑑賞・選評 2019年6月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
爽樹俳句会は、平成22年(2010年)遠嶺終刊のあと、有志により設立され早くも9年となりました。任期のある代表制、合議制の結社運営を特徴としてこの間順調に推移してまいりました。結社の基本理念は、有季定型を基本とし「情はこころ、景は自然 人と自然の一体となった情景俳句」として、「楽しく和やかな」句会運営を目指してまいりました。更に創刊5周年の平成28年に、「情景俳句に、新しさと個性を」という理念を加え、爽樹の目指すものをより明確にしてまいりました。さる5月27日開催の爽樹代議員会で提案報告されましたが、10周年に向けて体制を固め各種事業の計画をすすめて参ります。
兼題 : 虹、鉄線花、当季雑詠
特選 4 句
故郷を遠く偲ぶや虹の橋
山水 ( 0 )
雨上がりの大空に見る虹は、美しい。人はさまざまな感慨をもつ。この兼題に真摯に取り組まれ多くの佳句が寄せられた。大河にかかる虹に、子供の頃を思いだし遠くふるさとを偲ぶ望郷の佳句となった。季語の「虹」が精彩をはなつ。俳句を詠むと言うことは、季語を詠むということである。
雨あがる虹立つ京の街明かり
鈴音 ( 0 )
雨上がりの京都の街並みは殊更風情がある。歴史のある町の雨上がりの景が浮かぶ佳句である。
虹立つや鎮魂の海静もるる
写心 ( 0 )
東日本大震災の災害特に、暗黒の津波は未だ記憶に新しい。平穏な虹の立つ現在の海に対する祈りにも似た佳句である。
ひとり居の夕べに白き鉄線花
一歩 ( 0 )
茎や蔓が鉄線のように硬いのでこの名がある。色の種類があるが特に紫と白の花(萼)の印象が強い。独りすまいの夕方の佇まいを詠み鉄線花と取り合わせられた。堅実な生き方を暗示しているしみじみとした佳句である。
秀逸選 9 句
沖の虹くぐり補陀落浄土へと
夜来香 ( 0 )
虹に向かいどこまでもドライブをしたことがある。人は虹の先に行きたい、虹をくぐりたいという願望を持つ。その先、観世音菩薩の浄土があるとの憧れを一句とした。
朝虹の脚より船の帰りけり
愚者 ( 0 )
漁獲をあげて朝戻る漁船の漁港の景である。虹の中から現われるように、幻想的である。
虹消えて映画音楽くちずさぶ
悠々 ( 0 )
人は虹に憧れ、明るい気持ちになる。中七の映画音楽と響き合う一句である。
民のこゑ聞き漏らさずに鉄線花
パセリ ( 0 )
民衆の声は、政治には届かない。強い意思が必要である。
鉄線や風に吹かれて古都巡り
鈴音 ( 0 )
古都の町筋、路傍に咲く鉄線花と、気儘な古都巡りの取り合わせがよい。
世の穢れ知らぬがごとき海芋かな
愚者 ( 0 )
海芋(かいう)は、夏の季語。カラーとも和蘭海芋ともいう。純白の仏炎苞が清々しいが、このことを穢れを知らぬと詠んだ。
不器用な生き方父似鉄線花
葫蘆 ( 0 )
父の実直な生き方は作者には不器用と思えたのであろう、鉄線花の鉄のような蔓と通ずるものがある。
鉄線を活けて心の定まれり
真珠 ( 0 )
鉄線花を生けてその見事な出来映えに心が落ち着く作者の心境を詠まれている。紫のすっきりとした出来映えなのであろう。
緑蔭の句座に交はる児の一句
夜来香 ( 0 )