爽樹インターネット句会
第29回 鑑賞・選評 2018年12月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
時の経つのは早く師走となりました。今春から始めた爽樹インターネット句会は、会員の皆さんのご協力で順調に推移しており感謝もうしあげます。爽樹のホームページの閲覧度数も上向き、ホームページ経由での入会者もでるようになりました。しかしまだ不十分で来年はさらに拡充したいと思います。インタ-ネット句会の会員増強に格段のご助力をおねがいします。
兼題 : 時雨、葱、当季雑詠
特選 3 句
あなた誰叔母に問はれし初時雨
悠々 ( 0 )
高齢化社会で百歳超が七万人で更に増えると推定されており、それに伴い認知症も増えて、二人に一人がなる時代と言われている。この句のような経験を私も親族でしており身につまされる面もあるが、人間の生きることの根源のような厳粛な事実でもある。季語「初時雨」は、とうとう冬になったか、という感慨、、冬の初めにさっと降っては止み、止んだと思えば降る、物みな枯れつつあるなかでの侘しさをもつ情景である。このことはこの叔母の振るまいに通ずるものがあり響き合う季語である。
休日の目覚めや葱を刻む音
葫蘆 ( 0 )
一読して情景の判る句である。若い頃狭い家での生活で若妻が刻む葱の音と香りまで身近に感じている。昔日の思いでの句であり、表現に無駄がない句として鑑賞した。小澤主宰の唱えた情景俳句は、「見えること」が基本であるから、この句の「音」だけでは見えないということになるが、私は、「五感」で感ずるもの特に「音」に関しても景として認識できるものは、加えて評価する。(詳細は、爽樹誌28年1月号情景俳句論考参照)
もどかしき恋の二人や神の留守
夜来香 ( 0 )
十一月は、神無月とも呼ばれ、出雲に神様が集まるといわれる。恋愛中のふたりをもどかしく思う気持ちがあらわれており、季語の斡旋もよい。
秀逸選 6 句
越へて来し峠時雨の晴れにけり
葫蘆 ( 0 )
峠を登る間はしぐれていたが、峠に到達いたら晴れ上がり眺望が開けて居る情景が明解であり、時間の経過も詠み込まれている。
健やかや朝餉に匂ふ根深汁
夜来香 ( 0 )
根深葱の味噌汁香りの和風の朝餉の膳、健やかな一日を家族の様子が垣間見える句である。
葱無くばなんの馳走ぞ鍋の夜
写心 ( 0 )
鍋料理には、葱はつきものである。葱を賞賛する一句である。
焼き葱の甘さに気づく年となり
真珠 ( 0 )
年とともに深まる、焼き葱の美味礼賛の気持ちがあらわされていて共感される。
枯草や明日へと続く長い道
愚者 ( 0 )
茫々とした枯野の景、道は実景でもあり、心の中に見えている道でもある。これからの人生の険しい、さびしい道に思いをはせているのであろう。
忘年会尽くることなき裏話
悠々 ( 0 )
これから師走。忘年会の季節である。こういうば時に盛り上がるのは、裏話である。
選者のワンポイントアドバイス
原因と結果〔理落ち〕の句に、ならない様に注意。〔爽樹初心者テキスト参照〕
また、言い過ぎにならないように注意。〔芭蕉曰く、「言いおえてなにかある」〕