爽樹インターネット句会
第27回  鑑賞・選評    2018年10月

爽樹俳句会 顧問 半田卓郎

今年は、10月になっても台風がきております。台風のあとは又暑くなるなど気温の変動が大きく体調をくずされる人が多いようです。秋黴雨という季語がありますが、今年の9月は曇天と雨続きの天候でした。今月の兼題の秋の灯は、ひんやりと澄んだ夜気のために澄明な感じ、静かな心持ちに適しております。学ぶ心持ちが感じられる季語です。もう一つの兼題の木犀は、香り高く、花を見るよりもまず香りに開花を知ります。漂う芳香に秋の深まりを感じます。

兼題 :   秋灯、木犀、当季雑詠

特選 3 句

一書より立志抱きぬ秋灯

パセリ ( 0 )

季語秋の灯の本意の、学ぶ心持ちを詠まれています。一つの書物が、契機になり志を抱いたという、 作者の人生における重要な分岐点である事を詠まれています。

木犀の香と疎開先重なりぬ

悠々 ( 0 )

木犀の良い香りに遠い昔の恋を思い出す青春の記憶が甦ることを詠まれて、情緒のある句です。俳句は、過去にさかのぼることも未来に思いをはせることも出来ます。

もののふの護りし砦銀木犀

山水 ( 0 )

古城の跡が保存されているところが各地にあります。例えば石神井公園の中の豊島氏の城跡には濠なども残されおります。銀木犀の花と城跡との取り合わせがよい。

秀逸選 6 句

秋の灯や書を読む妻の生返事

夜来香 ( 0 )

読書に熱中している様子が伺える。諧謔味のある一句である。

水沫(みなわ)立つ渓流速し夕紅葉

山水 ( 0 )

渓流を丁寧に写生し夕日の中の紅葉の景が美しい。

待ち人は来ず身ほとりに金木犀(注)

パセリ ( 0 )

待ち合わせ場所に待ち人が来ない。待ち合わせ場所に選んだ木犀の樹の香りと金色の花に癒やされているのであろう。

木犀の香り残して過ぎし人

写心 ( 0 )

木犀の樹のある門辺での別れの情景を詠まれております。この家の人と思い出が在るのでしょう。 木犀の香りに、この家が浮かび、辛い別れを思い出すのでしょう。

母逝きて絶ゆることなくカンナ咲く

悠々 ( 0 )

母が亡くなっても、カンナの赤い花が次から次と咲き継いでいる様子が、カンナの花が,好きだった母の供養のように思えるのでしょう。

断崖の小さき庵に秋灯

真珠 ( 0 )

蕪村の絵のような景である。「断崖に在る小さい庵という、いかにも頼りない建物である。秋灯が灯ると、夜の帳に庵がクローズアップするようにみえてくる。

互選句 0 句