爽樹インターネット句会
第25回 鑑賞・選評 2018年8月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
暦の上では間もなく立秋ですが、異常気象による未曾有の酷暑が続いております。まだ当分酷暑は続きそうです。熱中症などにならない様にご自愛ください。暑さの中に、次第に秋の気配が忍び寄るものです。季節の推移に敏感になりましょう。今月の席題は、「羽抜鳥〔羽抜鶏〕」と、「夏の潮」〔夏潮〕です。羽抜鳥は、夏から秋に全身の羽毛が抜け換わる。みすぼらしく滑稽でもあり侘しい感じがします。夏の潮は、青葉の頃の黒潮のことです。いずれもイメージが明確な季語です。
兼題 : 夏潮、羽抜鳥、当季雑詠
特選 4 句
怠りの許さるる歳室の花
パセリ ( 0 )
補陀落渡海舟は、補陀落浄土を目指し舟で単身渡海することをさし、捨身往生である。死後魂は海上の彼方の先祖のすむ常世国に帰るということで観音信仰と結びつく。渡海舟は、熊野那智山、足摺岬、室戸岬などから出帆したという。夏潮の季語に観音信仰の概念を結びつけて詠んだ発想のユニークな佳句である。
生くるとは時には我慢羽抜鶏
愚者 ( 0 )
季節が巡ると、羽抜鶏は羽根が抜けみすぼらしくなるのが定めである。生きると言うことは、避けられない事、宿命のような柵のなかに生きねばならないという身につまされる一句である。
田園は墨絵の如し喜雨来る
夜来香 ( 0 )
中七の措辞「墨絵の如し」の比喩が、乾ききった田園の状態を巧みに表現している。正に恵みの雨を待つ心情が溢れている。昨近の天候も正に喜雨を待つ状態にある。
八ッ場ダム山河を惜しむ蝉時雨
悠々 ( 0 )
八ッ場ダムは、昭和27年から計画された利根川の支流の吾妻川の多目的ダムのことである。反対運動などで頓挫したり、政争の具となった時期もある。紆余曲折をへて計画は進展しているようで実現が見えてきている。水没を惜しむ気持ちを蝉時雨の季語に託している俳味のある一句である。固有名詞の使用がこの句の深みをました。
秀逸選 5 句
群青の潮に抱かれ眠りたし
真珠 ( 0 )
梅雨明けの海は一気に深みをます。黒潮の鮮烈なイメージを我が身に引き寄せて詠んでおり男のロマンを感ずる一句である。
庭統ぶる我が物顔の羽抜鶏
夜来香 ( 0 )
羽抜鶏の雄鳥のイメージを良く現している。昔庭で放し飼いをしていた頃の情景を思い出す。
羽抜鷄の時にあらじと声を挙げ
山水 ( 0 )
「時にあらじと声を挙ぐ」の措辞が、いかにも雄鳥の動作、挙動を描写している。ユーモラスでもある。
朝焼けの溶けゆく海へ白帆上ぐ
愚者 ( 0 )
朝焼けは、日の出間際に東の空が紅く染まる現象である。空も海も紅く染まる中へ白帆をあげて出港する情景は、美しく希望に満ちている。
海人の赤銅肌や夏の潮
写心 ( 0 )