爽樹インターネット句会
第24回 鑑賞・選評 2018年7月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
早々と梅雨が明けて酷暑となりましたが、今週は戻り梅雨のような日が続いております。当月の兼題の「朝曇り」は、夏の暑くなる日の朝の曇ったような空模様で、この時期に特有の現象です。もう一つに兼題の「百合の花」は正に今がシ-ズンです。 最近所沢で西武百合園が開催されました。 同所は西武グループの運営で自然林の中の3万平方メートルの敷地に45万株の百合が咲き、色彩と香りの一大空間となっております。
兼題 : 百合、朝曇、当季雑詠
特選 4 句
木洩れ日の熊野古道の百合の花
夜来香 ( 0 )
熊野古道は、本宮、新宮、那智の熊野三山に通じる参詣道の総称である。古代から中世にかけて三山信仰が始まり多くの人が参詣した。 参詣道に咲く百合は、参詣者の道しるべでもあり、心を癒やす存在でもある。植物園の百合の花と違い、こうした自然のなかの百合は、大きく逞しく存在感のある花である。
アンカーは飛び散る汗とゴール切る
真珠 ( 0 )
りレー競技のアンカーは、ゴール寸前の最も競技の白熱する場面である。中七の表現により その様子が生き生きと現されている。シャツターを切るように焦点を絞って詠んでいるのが良い。
舟を待つ矢切の渡し朝曇
夜来香 ( 0 )
矢切の渡しは、江戸川の渡し場で、柴又と松戸の矢切を結ぶ舟の発着場である。広い川幅の 江戸川の朝の景が眼前にある。曰くありげで風情のある場面を切り取っているのが良い。朝帰りの寅さんが、現われそうな渡し場の景である。
絹の道熱暑の底のサライ跡
写心 ( 0 )
サライとは、13世紀から15世紀ギブチャック草原を支配したモンゴル遊牧の政権である。 「熱暑の底」の表現から伺える焼けるような酷暑のシルクロードの景を映し出し無駄がない。
秀逸選 6 句
夏野へとメランコリーを振り捨てに
パセリ ( 0 )
メランコリーは、憂鬱、悲哀感 などをさす。 夏草の茂る活気の中に、憂鬱な気持ち、 悲壮感などは捨てて前へ進みたい.自分を励ます一句である。
朝曇駅へと急ぐ靴の音
葫蘆 ( 0 )
朝曇りの駅前通り、出勤や通学を急ぐ人の動きが見えてくる一句である。かって自分もその 一群の独りであったことを思い浮かべて入るのかもしれない。
百合の香や京の町家の細格子
パセリ ( 0 )
京都の町家と百合の花の取り合わせが、雰囲気のある景となっている。百合の花のにあう 人の住まいであろう。
ゆめまくら故郷の墓地の白きゆり
真珠 ( 0 )
夢に見る故郷の墓地、亡くなった人を偲ぶ気持ちが、季語の白百合の花に凝縮されている。
毀れたる無住の塀の四葩かな
愚者 ( 0 )
住む人のない家は荒れ果てている。しかしその庭にも季節が巡り紫陽花が美しく咲いている。 徒然草の無常観に繋がるような一句である。
山の湯に手足を伸ばし河鹿聴く
夜来香 ( 0 )