爽樹インターネット句会
第22回 鑑賞・選評 2018年5月
爽樹俳句会 顧問 半田卓郎
5月の爽樹インタ-ネット句会の、兼題は、「立夏」と「新茶」(いずれも傍題季語も含む)で、各1句、他に自由題当季雑詠1句の、計3句提出していただきました。今年の春は、異常気象で足早に過ぎて桜の季節も全国的に例年よりも早く終りました。既に「立夏」の前から夏めいた日もありました。会員の多い埼玉西部は、狹山・入間・所沢と所謂「狹山茶」の名産地で「新茶」は、馴染みのある季語で、多くの佳句が寄せられました。俳句は取り合わせといいますが、発想力を発揮して、バラェテイーのある作品に挑戦していただき、大変良かったと思います。尚、4月から、本インターネット句会が正式スタートし、会員の募集を行っておりますので、よろしくご協力をお願いいたします。特選4句と秀逸選6句を以下に掲載致します。
兼題 : 立夏、新茶、当季雑詠
特選 4 句
黒髪の靡く銀輪夏来る
愚者 ( 0 )
自転車で颯爽と過ぎゆく少女の姿を詠まれて、季語の「夏来る」との取り合わせも良い。表現に無駄がなく、リズムもよい。景として色々想像させられるのも良い。
そよ風の館のテラス新茶汲む
山水 ( 0 )
「そよ風の館のテラス」という措辞から、林に囲まれた高原であろうか、新茶を味合う場所としてふさわしい景が浮かぶ句である。
山国の陽だまり匂ふ花林檎
喜楽 ( 0 )
この季節、山国では白い林檎の花の花盛りである。奥の細道を巡る旅で東北を回ったが、農家の方々、特に女性達が忙しく働いて居られる。雪も解け、漸く暖かくなった雪国の林檎畑にほのかな良い香りが漂う。
王手飛車手にする古茶の波立ちぬ
愚者 ( 0 )
天才中学生棋士の活躍で、将棋人気が高い。この句は、指しているのは素人棋士で、プロの棋士のように冷静な勝負というわけに行かず、お互い感情的になっているのであろうか、「波立つ」という措辞が巧みであり、面白い。
秀逸選 6 句
江ノ島の陰より白帆夏は来ぬ
夜来香 ( 0 )
東京に近い夏の遊び場として「江ノ島」には、大勢の人が訪れ人気の場所である。テレビに毎日のように映され馴染みの景色である。白帆が現われて、「夏来る」実感を強くしたのであろう。
到来の羊羹厚く新茶汲む
夜来香 ( 0 )
新茶には、羊羹はつきものであり、即き過ぎのそしりをうけそうであるが、「到来の」という表現から、見直すこととした。「厚く」というのも心情が想像されて諧謔味があり良い。
新茶淹れ檀家総会始まりぬ
悠々 ( 0 )
檀家の総会の会合も、大きなお寺では大勢の集まりであるが、小さいお寺ではこじんまりと家族的な集まりなのかもしれない。新茶を味合いながら、事務的な総会が終るのを待っているのであろう。
花活けて良き予感あり今朝の夏
写心 ( 0 )
華道をおやりの作者が、出来映えがよいのであろう。気持ちよく過ごして居られる。前向きな取り組みをされてをられる事がうかがわれる佳句である。
仕事終へ事務所に満つる新茶の香
葫蘆 ( 0 )
今日一日の仕事を終えて、ほっと一息 ということであろう。 ささやかであるが、.仲間との雑談など、至福のときでもある。一杯のコーヒーという事とは違う、新茶の効能もあるのである。
蒼天へ梲の家並み新茶汲む
喜楽 ( 0 )